#find out.40 ページ40
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あっという間に季節は移り変わり
受験生にとっては勝負ともいわれる
白熱の夏休みに突入していた。
たまには息抜きしなくちゃね
なんて言い訳じみた理由を並べて
ちょっと浮かれた気分で1年ぶりの浴衣に袖を通す。
『ねーちゃんできたー？』
洗面台の方から飛んできた声に
同じ波長で「まだー」と返せば
髪をセットし終わったらしい海人が
リビングに顔を出した。
最後の帯付けに苦戦していた私を見て
そのまま足を進めてくると
『言ってくれればやるのに』
気づけば背後から回された大きな手が
私の手の中にあった紐を取りあげて
慣れた手つきで結びつけていく。
「海人ってほんと器用だよね」
『そー？ …まぁ、手先はそれなりに』
ときどき両脇の下を通る細い腕。
その度に包み込むように触れる僅かな体温。
背中越しに聞こえる、前よりも低くなった声。
思春期の男の子は恐ろしく
ここ数年の海人の成長は著しかった。
女の子みたいな高い声も
あどけなかったベビーフェイスも
華奢で私よりも低かった身長も
すべてが垢抜けて男らしくなったその姿に
姉でありながら胸が高鳴る瞬間さえある。
『よし、できた！ いいんじゃない？』
確認するように目の前に回り込んできた海人が
私の身体から一歩身を引いて
上から下まで視線を配ると
真夏に似合う向日葵のような笑顔を咲かせて
満足そうにニッコリと笑った。
『うん、ばっちり！かわいい！綺麗！』
「あ、ありがとう」
いつものように恥ずかしげもなく
さらっと私を褒めてくれる弟は
外見は変わっても中身はそのまま。
だけど、
毎年のように「一緒に行く」と言って聞かなかった
この時期恒例の市の大きな花火大会を控えて
例のごとく縋ってくると思って構えていた私に
海人は初めてお決まりの台詞を言わなかった。
しょー先輩と行くんでしょ？なんて
気を遣っているのか、拗ねているのか
あっさりと放たれた言葉に拍子抜けしたのが
夏休みに入ったばかりのつい先日のこと。
あれだけ煩わしいと思っていたはずなのに
なんだか突然離れていってしまったようで
ほんの少し寂しいなんて思いつつ
ずっとくっついて回っていた弟が
ついに姉離れしたのかと感心もしていた。
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
