#find out.38 ページ38
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平野くんが玄樹くんを助けた日。
駅のホーム。
結果的に階段から落ちてしまった玄樹くん。
──紫耀は駆けつけた警察に連れて行かれて
その子がそのあとどうなったかも分からないまま
どんなに前を向いて歩いたって
きっと平野くんの中で
あの日の時間は止まっていて
──自分のせいでその子を巻き込んで傷つけたって
ずっと自分を責めて苦しんでる
背負っていく苦しみは、消えないまま
……そのはずだった。だから
「多少のケガはしたけど、大丈夫だったって」
意識は飛んだ上、あちこち打撲したという話を
平然としていた玄樹くんを
頭の隅っこで思い出しながら
表情の晴れない平野くんに微笑みかける。
「…でも、俺のせいで」
『あの時は、ありがとうございました』
平野くんの言葉を遮るように
口を開いた玄樹くんの言葉は
紛れもなく彼への感謝の気持ちで
『ありがとうございました』
再び伝えた思いと、ペコッと下げた頭を上げると
口端にえくぼを作って笑った玄樹くん。
──助けてくれたお礼言えてないままだったからさ
この想いが、言葉が、笑顔が
平野くんを締め付ける胸の内を
少しでも溶かしてくれたら…
黙然と玄樹くんを見つめていた平野くんは
何かを堪えるように一度息を呑み込んだあと
今度は間違いなく安堵の表情を
ほんの少し歪ませながら優しく目を細めた。
「よかった、元気でいてくれて……よかった」
消え入りそうな声で
だけど確かな温度を感じる微かな音は
きっとこの瞬間
平野くんの中でつっかえていたものを
なだらかに解かしていった。
.
『んじゃ、俺らこのあと用事あっから』
お店を出て、戻ってきた駅の出入口で
立ち止まり振り返った廉が
粗雑な動作でスマホ画面の時計を確認する。
「あ、うん。じゃあ…ありがとね、玄樹くん」
『こちらこそ！またね、Aちゃん！』
ほんわか世界に連れ込まれそうになりながら
笑顔で手を振り返すと
「またってなんやねん」と小さく呟いて
つまらなそうな顔をしている廉。
「廉も、またね」なんて声をかければ
「うっせ、はよ帰れ」ってそっぽを向く廉が
子供みたいでなんだかおかしかった。
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
