#find out.37 ページ37
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前に神宮寺と待ち合わせたことのある
駅前の小洒落たカフェに腰を落ち着かせて
それぞれ適当な飲み物をオーダーする。
「それで、会ってほしい人って…？」
遠慮気味に口を開いた平野くんは
玄樹くんを目の前にしても
この状況を把握しきれていないようだった。
神宮寺の話を聞いた限りでは
あの時の平野くんは茫然自失で混乱もしてて
玄樹くんの顔を憶えていなくても
何もおかしくはないのだけれど。
「この子、玄樹くん！」
頭にハテナを浮かべっぱなしの平野くんに
玄樹くんを掌で示して紹介してみせると
ペコリと頭を下げた玄樹くんと同じように
平野くんも会釈をするものの
浮かんだハテナは消えないままだった。
二人が同じ場所に居合わせるのは
花火大会の日以来。
だけど、もっと正確に言えば
彼らがちゃんと出逢ったのは
「平野くん、転校してくる前
名古屋の駅で人を助けたことがあるでしょ？」
きっと苦い記憶のままのその日を
さすがにすぐに思い出せたのか
平野くんはゆっくりと頷いたあと
そのまま玄樹くんに視線を移した。
「でも、あの時の子って確か…女の子……だっ…」
そのとき、何かに気づいたように
あ、っと声をあげて目を見開いた平野くんを見て
廉は片方の口角を上げて静かに鼻で笑った。
「玄樹くんだったんだよ」
私が放った一言に平野くんは
不安にも安堵にも見える
複雑な感情が入り交じった表情を浮かべると
真ん丸にしていた瞳を揺らしながら
視線をゆっくりと下に外して
何か言葉を探しているようだった。
俯いていた顔がそっと玄樹くんに向けられたとき
絞り出すようにやっとこぼされた声。
「その…あの時は、本当に…ごめんなさい」
力なく深く頭を下げた平野くんに
あたふたする玄樹くんをみながら
私と廉だけが変に穏やかな空気を纏っていた。
「ずっとね、お礼が言いたかったんだって」
「えっ…？」
「ね？玄樹くん」
人見知りなのか、さっきからあまり言葉を発さずに
うんうん、と何度も頷く可愛いお顔は
まるで子犬みたいだ。
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
