#find out.33 ページ33
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何か言わなくちゃ。
せっかく伝えてくれた想いに、こたえなきゃ。
そう思うのに
込み上げるものに声が詰まって
留まらない涙で目の前が滲んで
彼が今どんな表情をしているのかもわからない。
さっき神宮寺から貰ったティッシュは
もう既に使い物にならなくて
濡れたティッシュを握りしめた手で
溢れ出るものを拭おうとしたとき
そっと頬に触れた、やわらかくて温かい感触。
滑らかな指がゆっくりと雫を掬いとって
開けた視界の先に見えたのは
平野くんの優しい笑顔だった。
『ごめんね。本当は俺から言うべきだったのに』
ただただ首を横に振る私の目から
とめどなく溢れ出るものすべてを
大きな手が受け止めて丁寧に拭っていく。
そうだ、私はこの温もりに触れたかったんだ。
ずっとこの手を伸ばしてほしかったんだ。
やっと、届いた。
きっとぐしゃぐしゃになっているであろう顔の
濡れた頬に嬉しさを滲ませれば
ぼやけた視界の向こうで平野くんも微笑んだ。
『もう絶対傷つけたりなんてしないから』
やわらかい音の中には
迷いなんて感じられなくて
『俺に、Aちゃんのこと守らせてほしい』
優しくも強い眼差しを見つめ返せば
頬に添えられていた手がそっと離されて
ベッドの上で姿勢を正すように座り直した平野くんと
もう一度視線を重ね合わせた。
『これからも、隣にいさせてください』
心地よいハスキーな声。
綺麗な目にかかる前髪。
ふわっとした眩しい笑顔。
そのすべてが愛しくて
何ひとつこの手から零れ落ちることのないように
目に、頭に、胸に、身体中に焼き付けていく。
たくさんの想いを乗せて
瞳に残されていた雫を振り払うように深く頷くと
顔を上げた先で優しく目を細めていた平野くんは
本当に太陽みたいだった。
つられるように顔を綻ばせれば
へへっ、なんて笑いながら後ろ首をさすって
『なんか照れるね』
そんな小さな仕草にも、台詞にも
私の心はいちいち反応して
募らせてきたはずの想いはまだまだ加速する。
こんなふうに笑い合えることが
やっぱり何よりも嬉しくて、幸せで
彼が隣にいてくれるなら
この先のどんな未来を想像しても
眩しいくらいに耀いてみえた。
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
