#find out.32 ページ32
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瞳の奥を揺らしながら
暫く黙っていた平野くんが
半開きになっていた口から小さく息を吸った。
『ごめん…俺、ずっと…』
祈る気持ちで待ち続けていた私の耳に
やっと聞こえてきた掠れた声。
次にどんな言葉が続くのかはわからなかったけど
何か思いを巡らせるように
声を絞り出そうとするその姿が
なんだか今の自分と重なって見えた。
『ずっと、どうしていいかわかんなくて。
だけど笑ってればなんとかなるって
誰も傷つけずにすむって、そう思ってた』
俯いて話す平野くんの表情は
憂いを含みながらも、やっぱり穏やかにも見えた。
『でも気づいたら自分で自分がわからなくなってて
結局Aちゃんのことも傷つけて…』
情けないよね、
そう言って小さく笑った平野くんの
俯いて隠れたさらさらの前髪から覗く瞳が
一瞬、きらりと輝きを放った。
初めてだった。
普段は温厚で、優しくて
びっくりするくらい天然で
だけど人一倍責任感が強くて、人に弱みをみせない
そんな彼が、何かの蓋が外れたように
溢れ出すものをひとつひとつ言葉にして
確かな気持ちを届けてくれている。
思い出す、どこか陰を纏った儚い笑顔。
何度も向けられた悲しげな背中。
きっと時には感情を押し殺して
たくさんの言葉を呑み込んで
自分の中に閉じ込めて一人で抱えてきたんだ。
『でも、』
ゆっくりと上げられた顔。
『俺、もう決めたよ』
やっぱりキラリとしたものを浮かべていた瞳に
滲ませていたのは悲しいものなんかじゃなかった。
『Aちゃんと一緒にいたい』
「え…？」
『本当はずっと言いたかった』
両手で素早く目元を拭ったあと
改めて向けられた綺麗な顔。
目尻に僅かに光るものを残して私を捉えた瞳に
吸い込まれそうになりながら視線を重ね合わせた。
『Aちゃんのことが、好きです』
彼へと続く道が
広く明るく拓かれていくような
そんな景色が目の前に広がっていく。
どうしてだろう。
前にもこんなことがあって
あの時は素直に受け止めることができなくて
でも今は確かに交じり合った二つの想いに
言葉にできないくらい嬉しいはずなのに
涙が溢れ出して、止まらないのは。
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#find out.33→←#find out.31 ーShoー
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
