#find out.24 ページ24
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目を見開いて口をぽかんと開けていた神宮寺に
慌てて訂正をいれる。
「ごめんごめん、そういえば国民的彼氏？だったね。
あくまで私の彼氏ではないけど」
『はぁ？ふざけんなよお前まじで』
そもそもふざけてんのはどっちだよ
なんて言葉にはしないけれど。
なぜか神宮寺は呆れたように深い溜め息をついた。
『まぁいいや。俺のことはいいから、ほら』
椅子から立ち上がって私の背後に回ると
後ろから肩を押されて
神宮寺が座っていた椅子に座らされる。
『俺は便所行ってくるから』
そう言って颯爽と病室を出ていったあと
二人取り残されたように静まった部屋の中で
表情の変わらない平野くんにそっと視線を移した。
「平野くん。…神宮寺、トイレ行っちゃった」
眠っている彼に
なんて声をかけたらいいのかわからなくて
そんなどうでもいいことを口にしてしまう。
あ、そうだ
「昨日ね、水族館に行ったんだ。……廉と。
すっごく綺麗だったよ！大きいサメもいたし
ペンギンもかわいくて…あとイルカショーも見たよ」
平野くんなら、どんな顔をするだろう。
きっとどんなものを目にしても
その瞳をキラキラ輝かせて、たくさんはしゃいで
ずっと太陽みたいな笑顔を咲かせてるんだろうな。
「あとね、久しぶりに観覧車に乗った。それから…」
それから……
大切なことは、目が覚めたら、ちゃんと伝えるから。
ベッド端に置かれた力の抜けた手をそっと持ち上げて
両手で包み込むようにして祈るようにキュッと握る。
「お願い…目を覚まして…」
彼が眠り続けているこの1週間。
時間が経つにつれて希望が薄れていくような気がして
本当はずっとずっと怖くて不安でしかたない。
それでも、今は彼を信じるしかないから。
「ちゃんと、待ってるね。 ……紫耀くん」
初めて口にしてみた彼の名前に
体が熱を持って急激に恥ずかしさが込み上げてくる。
その気持ちを押し込めるように
唇をキュッと結んだ。
そのとき
握りしめていた手の中で、微かに伝わった感触。
同時に、後ろで扉が開く音が聞こえた。
『はぁースッキリした！そろそろ行くか？』
「待って！」
戻ってきた神宮寺を振り返らずに
ただ一点に意識を集中させる。
『どうした？』
「今、動いたの」
ほんの僅かに、だけど確実に。
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
