#find out.20 ーJinー ページ20
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もうすっかり散ってしまった桜の木の下に
散り積もった花びらが作り出すピンク色の絨毯。
過ぎ行く季節を惜しみながら
桜道をふんわりと踏みしめて歩いていく俺の隣には
眉間に皺を寄せて何か考えている様子のA。
もともと鈍感だとは思ってたけど
それはもうなかなかのもので
これまで何度呆気に取られたことか。
──神宮寺ってさ、なんで彼女いないの？
なんだよそれ。
そんなの、決まってんじゃん。
俺はそれなりにアピールしてきたつもりなのに
全然気づかないどころか塩対応のAを
あるかもわからない可能性に賭けて
ずっと一途に想い続けてきたのにさ。
「逆に俺に彼女いたら何とも思わないの？」
いたらちょっとは嫉妬してくれんのかなとか
そんな有り得ない期待してみちゃったりして
聞かなくてもわかってたけど一応投げてみた問いに
やっぱりAは間抜けな顔して首を傾げてた。
そりゃそうだよな
なんとも思わねーよな
「Aが何も思わないなら尚更彼女いらねぇわ」
俺のこと気にして妬いてくれるなら話は別だけど。
そもそも紫耀が転校してきてから
俺の淡い夢は自ら手放したんだった。
だって悔しいけど、紫耀には勝てないと思った。
俺には見せたことのない表情を
紫耀の前ではたくさん浮かべるようになった
Aの気持ちはすぐにわかった。
ああ、紫耀が好きなんだって。
そして、紫耀もAが好きなんだって。
気づいたときにはもう俺が入る隙なんてなくて
もっと早くAに真正面から好きだと伝えていれば
何か違ったのかなって
そんなことばかり考えるようになった。
でもさ、俺は紫耀だから仕方ないと思えたんだよ。
紫耀にならAを任せられるって思えたんだ。
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「……紫耀、まだ起きねーのかな」
小さく相槌を打ってから俯いたAと
病院へと続く角を曲がって歩を進めていく。
意識はすぐに戻る。
きっともうすぐ目覚めてくれる。
そう信じてはいても、不安は隠しきれなかった。
それはきっとAも同じで
いや、きっとAの方が不安でたまらないはずで
毎日必死に弱々しい笑顔を浮かべるAを
俺はこの手で抱きしめてやりたいと何度も思った。
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
