#10 春風の音が鳴る ページ10
「…お前はいいよね、お気楽で。その様子じゃ、ご飯くれる友達も他にいるんでしょ」
ふっくらしたお腹をさすってやれば、ゴロゴロと喉を鳴らしてご機嫌な様子。
私も来世は、猫になって自由気ままに暮らしたい。
「ねー、聞いてる？」
私の憂鬱なんて、興味ないんだろうけど。
唯一の友達なんだから、ちょっとは私のセンチメンタルな話に付き合ってくれても、いいじゃんか。
「……聞いてないか」
「聞いとるよ？」
猫を撫でる手が、ビクリと止まった。
背後から聞こえた、優しい声。
また、昨日と同じ声。
「えっ……」
「何、友達が欲しいん」
「あ…の！違くて」
「ええやん、友達。どう？おれとか、おれとか…あとー、おれとか」
昨日と一緒。
窓のサッシに腕組んで、ちょこんと顎乗せて顔出して。
相変わらずの萌え袖。
…それから今気づいたけど、指が綺麗。
「その…違うんです別に、友達とか」
早口、しかも小声。
なんか気持ち悪い喋り方しちゃった。
「なりたくない？俺と友達」
心臓はバックバクで、今にも口から出てきそう。
そんな私とは正反対で、彼は余裕そうに口角を上げてる。
「そういう…わけじゃ、ないですけど」
こういう時、何て返したらいいか分からない。
だからどっちつかずで曖昧な答えを返せば、彼はふふ、って鼻で笑って窓から離れる。
……いなくなった。
何？やっぱり、引かれた？
いや…そうだよね、うん。
“友達になろう”への最適解なんて知らないから、きっと答えは間違えた。
お母さんはもっと、こういうことを電話で練習させてくれたらよかったのに。
________ギギ、ギ。
俯いた私の横で、錆びかけた鉄製のドアの音が鳴る。
嘘でしょ、って思った。
…来ないで。私、これ以上はもうできない。
「じゃあなってよ。おれと友達」
ほんのちょっと眉をひそめて、歯を見せて笑ってるその人。
ドアの隙間から足を出して、とうとう私のそばまで近づいてくる。
バクバクの心臓を抑え込むように、キュッと膝を抱えた。
「コジローだけじゃ寂しいやろ」
「コ…コタロー」
「あ、そや」
よいしょ、と隣であぐらかいて、パンの袋をビリリと破る。
この人、ここで食べる気だ。
「なぁ」
…何でこんな私のそばで。こんなことしたって、つまんないだろうに。
「名前教えて」
それは唐突に、ぽとん、と落とされた言葉。
パンの袋が擦れる音と、おにぎりを持ったまま固まる私の間に、落ちてった言葉。
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…！ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月25日 17時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…！これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします！！ (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…？永瀬さんの妹になって買って貰いたい！それからなんですか！主人公ちゃんの可愛さ！！永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい！ (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちこ | 作成日時：2020年10月13日 19時
