#32 その約束が儚くても ページ32
絶対、離れない。
そんな確証もないことは、言わない方がいい。
だって、人って分からない。
ある日突然、何てことない一言やふとした拍子に、いなくなってしまうことがある。
それはいくら“離れない”だとかと口約束していても、あっさりと裏切られるものだ。
だから、その言葉は信じない。
_________けど、
「なんで…私なんかに、そんなに」
そう言ってくれた彼の心は、今確かにここに在って。
少なくともその心だけは、信じてみたいと思う。
その、そっと示された儚い口約束の裏にある思考回路や思いやりを。
今は、信じていようと思う。
「あんなぁ。私“なんか”とか言うの、これから禁止」
「…え、でも」
「でもやないの。おれが禁止って言ったら禁止なの。もしまた言ったら…んー、どしよかな」
永瀬くんは頭の後ろで両手を組んで、宙を見ながら考える。
…心なしかちょっと楽しそうなのは、気のせいだろうか。
「…あ、分かった。んじゃもしまた言ったら、おれの言うこと何でも1つ聞いて」
「…何でも？」
「何でも。ほら、降りんで」
気づけばもう、学校の最寄駅。
家からここまでの時間をこんなにも短く感じたのは、これが初めてだ。
「あ…はい」
だけど席を立った途端、心臓のバクバクと憂鬱な気持ちがまた加速した。
改札を出た後も前に出す足が震えたり、彼への相槌が下手になったり。
…あの2人だって永瀬くんと同じで、そんなに怖いことないって。
さっきのメッセージ通り愉快で楽しい人だって、頭では分かっているのに。
「…どした。緊張しとるん？」
そんでな、ほんでな…って次々と色んなことを話してくれていた永瀬くんが、不意にハタと足を止めた。
「……ちょっとだけ」
「んじゃあ、そこでちょっと休んでこか。紫耀もゆっくりきてって言っとったし」
彼が指差したのは、丁度そこにあった小さな公園。
“あ、いや”だとかといつもの下手くそな遠慮をしている内に、両肩をグンと下げられて強制的にベンチに座らせられる。
「よーし。なんか飲みもん飲もか」
「だ…大丈夫です、すみません」
「緊張したら、喉乾くやろ？てゆーか…」
“いちいち謝らんの”。
そう半分呆れたように笑って言いながら、彼はスタスタと自販機の光の方へと歩いて行く。
空の色は、さっきよりもオレンジが強い青だ。
その色が、彼の後ろ姿をじんわりと照らしていた。
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…！ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月25日 17時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…！これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします！！ (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…？永瀬さんの妹になって買って貰いたい！それからなんですか！主人公ちゃんの可愛さ！！永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい！ (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちこ | 作成日時：2020年10月13日 19時
