#4 動かずじまいの右手 ページ4
「おん。知り合いっていうかまぁ、さっきちょっと話しただけやけど」
「へぇ、めっずらし」
首を少し上に傾けて、目の前に立つ2人の首元を見る。
ちゃんと顔を見る勇気も度胸も、持ち合わせていない。
男子だからやっぱり背が高いし、目の前に並んで居られると何だかちょっと圧を感じる。
「あ……あの、」
“どいてください”
“すみません”
どんな言葉が正解なのか、分からない。
こういうとき、もっとちゃんと人と話していれば。
するっと上手い言葉が出たりするもんなんだろうか。
「っとと…ドーン！」
私の言葉にならない声に覆いかぶさったのは、2人の後ろにぶつかってきた誰かの声だった。
そしてこれが勘違いじゃなければ、彼はここと反対のドアから出てきたはずだ。
…ってことは。
この人も私と同じクラス、ってこと。
クラスメイトの顔すらよく見ていなかったから、知らなかったけど。
「おぉいてぇよ」
「海人、何でそんな荷物多いん。おかしいやろ」
新学期なのに、終業式みたいな量の荷物を抱えて2人に体当たり。
やんちゃっぽいというか、純粋っぽいというか。
何となくそんな印象。
「なんか去年センセーにバレて没収されたマンガ、今日いっぱい返ってきた」
ほら、やっぱり。
“えへへ”なんて効果音が付いてるような、満面の笑み。
下手したら、お星様まで飛び散っているような。
「もー持ってくんなよ、お前」
そして目の前で繰り広げられる会話に、瞬時に察する。
砕けた感じ、絶妙な距離感、解れっぱなしの表情。
この3人、多分すごくすごく仲が良い。
さっきの昼休みで出た“かいと”って名前も、きっとこの人で間違いないだろうし。
「帰るぞっ」
「おう」
ぼけっと突っ立って3人を見ていたけど、自分ですらも自分の存在を忘れていた。
この3人の存在感が強すぎて、私なんかは空気みたいになってしまう。
それはこの人らも同じみたいで。
さっきまでほんの少し話してたハズ…の私に何も言わずに背を向けて、さっさと階段の方へ歩いて行った。
「じゃねー」
…けど、彼だけは別みたい。
れん。
そう。れん、って人。
数歩歩いたところで振り返って、また私にブンブンと手を振っている。
…振り返さなきゃ。じゃないと、愛想悪いヤツだって思われる。
その一心で右腕に力を込めたけど、まるでダメ。
私の意思に反して、手はピクリとも動いてくれなかった。
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…！ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月25日 17時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…！これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします！！ (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…？永瀬さんの妹になって買って貰いたい！それからなんですか！主人公ちゃんの可愛さ！！永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい！ (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちこ | 作成日時：2020年10月13日 19時
