#23 無目的マンション ページ23
“永瀬廉”
彼から戻された自分のスマホの画面には、その3文字がくっきりと表示されていた。
れんって、この字なんだ。
何となくの経験則で勝手に“蓮”かな、とか思ってたけど、正解は“廉”の方。
妙に名前の字のバランスが良くて、内心少しビックリした。
また1つ彼のことを知ってしまったという細やかな事実が、心の片隅でむず痒い。
「なぁ、そんで家はどこなん」
「い…家？」
「おん。ここまで来たし、教えてや」
今まで友達に自分の家を教えたことなんて、あっただろうか。
記憶に残る限りでは、なかったような。
…けど彼は、不憫なことにこんなつまらない私に付いてきた挙げ句、未だ何のゴールにも到達していないのだ。
今の彼にとって、この駅の唯一の目玉が「私の家」にしかならないのだとしたら、断ってしまう方がなんだか申し訳ないような気さえする。
「あぁ、じゃあ…こっちです」
あれだけ“学校の人に知られたくない”っていう思いで選んだとこなのに。
新学期早々、自分から人を案内することになるとは1mmも思っていなかった。
「えぇと。ここです、マンション」
「ほぉ……」
とはいえ、人の家なんて見たところで流石の彼も良いリアクションはできないらしい。
そりゃ、そうだ。私だって他人のマンションに案内されても、「ほぉ」以外に何を言えばいいか分からない。
「…あの、すみません……つまらなくて。私、もう家に帰ります…けど」
何とも言えない気持ちを引きずりながら、マンションのエントランスの方に足を向ける。
もう、本当に片身狭い。それから謎に申し訳ない。
私の家はどこにでもあるようなマンションの1室で、わざわざ見物するようなものでも何でもないんだってば。
「…え」
半ばヤケクソになって歩き出した途端、彼の爪先もまたジリリと動き出したのを、私は見逃さなかった。
「あの…も、もしかしてまだ、付いてきます？」
「部屋…部屋の前まで一旦行かしてくれる？」
彼はマンションの外構を見上げながら、私の問いにまた問いを投げ返す。
…不思議な人。別にこの人なら、私の部屋まで付いてこようが部屋番号までバレようが、一向に構わないんだけど。
「いい、ですけど。ほんっとに何も…ないですよ」
「いや、違うんよ」
「違う？」
「部屋何階なん？」
私の部屋に近づく度に、彼の口角は綺麗なグラデーションを描きながら1度ずつ下がっていった。
…ほら、言わんこっちゃない。
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…！ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月25日 17時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…！これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします！！ (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…？永瀬さんの妹になって買って貰いたい！それからなんですか！主人公ちゃんの可愛さ！！永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい！ (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちこ | 作成日時：2020年10月13日 19時
