#19 猫と憂鬱と彼の風 ページ19
突然の失態に、首がジリジリと下がっていく。
やっぱり人と話すの、向いてない。
「おれ、興味あんねん。Aちゃんに」
俯いてからサラリと呼ばれた自分の名前に、トクンと心臓が鳴いた。
こんなにも優しい響き。こんなにもあたたかな声。
それはきっと、私の首を持ち上げる魔法だ。
「…興味」
「興味って言っても、面白がってんのとちゃうよ。何ていうか…もっと知りたい」
ふわり、風が吹く。
2人の間に音もなく割って入ってきたのは、また桜の花びらだった。
「こないだな、Aちゃんが校舎裏で猫と遊んどったの見て。勝手に思っただけやけど、なんか俯きがちやし…寂しそうで。けど」
“友達なんてどうせできない。”
自分の胸の中にある、ほんの僅かな淡い期待を塗りつぶして、押し殺して。
溢れ出た憂鬱の当て付けに、猫を撫でた。
猫と喋ってたら、ほんの少しでも憂鬱が和らぐような気がした。
「_______1回、笑った」
だけどその、憂鬱を。
根こそぎ持っていってしまう風が、私の頬を優しく撫でる。
「だから俺、それが見たい」
今、ここで、吹いている。
「俺と友達になって？」
とんでもない口説き文句だ。
自分の笑顔になんて、自分ですら気付かなかったのに。
それを見た、と。
そしてそれが見たい、と。
「……よ……喜んで」
「よしゃっ」
私の笑顔に気付く人。
ただ友達になるだけで、喜ぶ人。
きっと後にも先にも、彼1人だ。
「じゃあ、行こか！」
彼は今までで1番の笑顔をにこーって浮かべて、まるで目的地があるみたいに歩いてく。
「あ、あの？」
「もーちょいだけ、付いて行きたい。…あかん？」
また改札を通って、ピ。
私は定期だから引かれないけど、確か学校からここまで180円。
お金を払ってまで降り立つような地じゃないから、引き返すことをお薦めしたい。
だけど“あかん？”なんて言われたら。もう断れないのは自明だ。
「ほんま最近はいい天気やなぁ」
彼は随分ご機嫌で、ニコニコしっぱなし。
このままじゃもうすぐ家に着いちゃうけれど…この人、いつ帰るんだろう。
「なぁ、俺のことストーカーみたいとか思ってる？」
「…ストーカーとは別に、思ってないですけど」
私のマンション、もうここから見えちゃってる。
このまま家まで付いてくるの？
いや、流石にそれはないか。
…じゃあ逆に、どこまで来るの？
止まらない足とご機嫌な彼を引き連れて、私の頭は忙しなく考えていた。
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…！ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月25日 17時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…！これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします！！ (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…？永瀬さんの妹になって買って貰いたい！それからなんですか！主人公ちゃんの可愛さ！！永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい！ (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちこ | 作成日時：2020年10月13日 19時
