#17 手遅れネタバラシ ページ17
ホームに滑り込んできた車体は、徐々に速度を落としていく。
ブレーキの音が落ち着くのを見計らって、私はまた口を開けた。
「…知ってるんですか」
「そりゃあ、この辺の駅はね」
目の前に開いたドア。
とりあえず乗り込んだはいいけれど、会話に一区切りついて、3秒の沈黙。
…どうしよう。気まずい、って思われる。
ていうかもう既に、私が気まずい。
「あ…あの。そちらは、」
「座ろか？あっち」
勇気を振り絞って投げかけた問いは、見事なまでに空振った。
弱すぎる私のメンタルは、たったこれだけでえぐられる。あぁもう、ほんとダメだ。
「…はい」
落ち込み気味な気分を引きずって、緑のシートに腰掛けた。
すると続いて隣に座った彼の体重の分だけ、またフカフカと沈む。
「おれはね。ここの駅が最寄り」
「え？」
再び、ゆっくりと動きだした電車。
それは私たちを閉じ込めて、どんどん加速していく。
「学校から歩いて5、6分のとこなんよ、おれんち」
今更すぎるネタバラシ。
“一緒に帰らん？”なんて、ウソじゃんか。
「じゃ、じゃあ…降りましょう、次で」
途端に襲ってきた申し訳なさと、肩身の狭さ。
私がもっと早く気づいていれば、この人に無駄足を踏ませずに済んだのに。
「いやいやいや。はは、降りへんよ」
「でも…」
「おれな。今日は猫好きちゃんと話すって決めてん」
こんな時ばっかり、ちょっと上目遣いでそんなことを言ってくるものだから、喉まで上がってきていた色んな言葉が急降下して戻っていく。
「教えて、今度こそ。君の名前」
不思議と、目を逸らせなかった。
今までは人と一瞬でも目が合えば、反射的に逸らしていたのに。
私の目線を吸い込んでしまうようなその目で強く見つめられて、逃げられない。
「え…っと」
大嫌いな自己紹介。
どうせ名乗っても、誰も名前なんか覚えてくれなかった。
私の名前なんて、誰一人聞いてはくれなかった。
「わ…たし、は」
「うん」
「えと…」
「…うん」
さっきと同じ、優しい相槌。
…あぁ、大丈夫だ。
きっとこの人は、不器用な私の内側を引き出してくれる。
「長瀬…A、です」
遂にボソリと呟いた名前。
だけど、目の前の口角がふっと下がる。
…何で。どうして？
私また、何か間違えたのかな。
「…ながせ？まじ？」
…あ。変わったの、口角だけじゃない。
眉を上げて、目を見開いて。
それでまた、口角が上がった。
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…！ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月25日 17時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…！これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします！！ (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…？永瀬さんの妹になって買って貰いたい！それからなんですか！主人公ちゃんの可愛さ！！永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい！ (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちこ | 作成日時：2020年10月13日 19時
