【d!】我々のメイドリーダー 2 (ページ9)

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『そんな！私がグルッペン様へお願いするなんてできません！むしろ何か命令してくださったほうが嬉しいです！』
「う、うむ？」

あれからしばらく私の要望はないのかと言われたがあるはずもなく、結局またまたグルッペン様に気を使わせてしまった気がする…。

「まぁでもお前らしい回答が来て安心した」
『喜んで良いのかわかりませんが…』
「いいんだ」

そう言って笑ったグルッペン様からお湯換えの許可をいただき、厨房へと向かう。
ティーワゴンを押しながら廊下を歩き、厨房の扉を開けると珍しく鬱様がいらっしゃった。

『鬱様？どうしてここへ？』
「いや、多分お湯が必要ちゃうかな～って思てな。使用人にやらせるより僕が用意したろって」
『え？』

いつもふかしている煙草はなく、へにゃりと眼鏡越しに目を細めて笑った鬱様の言葉に引っかかる。
私がグルッペン様のところに行って、どういった会話をどれだけ時間をかけて行ったかをすべて知っているような言い方に引っかかる。

「あ、いいよ。Aちゃんの言いたいこと分かるで、君分かりやすいし」
『そんなにわかりやすいでしょうか？』
「うん、めっちゃ顔に書いてあるで、ほら」

そう言って私の眉間を人差し指で押さえつける。
いつの間にか寄っていた眉間のしわを指摘してくれたようだ、だが急に目元に伸びた爪をもってこられると反射で目をつむってしまう。
それを見たか鬱様はケラケラと笑い「すまんすまん」と言って離れていった。

まさか先ほどスチュワードに会ったのも鬱様の根回しなのだろうか。
いやきっとそうだ。そうじゃないとあんなにタイミングよく事が運ぶわけがない。

『鬱様』
「ん？」
『本当にありがとうございました』
「なんのことや？俺なんも知らんで」
『今晩のお食事は何にしましょうか？』
「え決めてええの！？」
『はい、今夜だけ、特別です』
「え～～めっちゃ迷うわぁ…」
『助けていただいたお礼です。なんでもお好きなものをどうぞ』
「なんでもええん？なら、」

腕を組んで悩んでいた鬱様がこちらに視線を向けた。

「そんならAちゃ『あ、いけない！グルッペン様をお待たせしてるんでしたわ！16時までにメニューの希望を教えてくださいね！失礼します！』…気を付けるんやで～」

慌ててお湯を確保し厨房から逃走する。
思わず逃げてしまったが仕方がない、鬱様は女性慣れしすぎてるんです。
頬に両手を添えてドクドクを大きな音を立てる心臓を落ち着かせるために深呼吸をした。