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「でも。」
と、豊臣くんは再び話を始めた。
「自分が弱いって分かってても立ち向かわないといけない時もあるんやで。その時のために強くなることは辞めない方がええと思う。」
彼は明義くんを真剣な眼差し見つめていた。いつもとは違う表情や声色に思わずどきりとする。
「それに、頭がキレる上に喧嘩も強かったら、かっこええと思わん?」
にっと笑う豊臣くん。明義くんもそっちの方がかっこいいと納得している様子。私はというと先程の光景が頭から離れず、ハッとした時には銀の匙に乗ったアイスが溶けていた。
「実はな、俺も昔は弱かってん。明義も絶対強くなれる。だからちゃんと稽古行くんやで?」
「うん!僕も強くなる!!強くなったら、お兄ちゃんと手合わせする!!」
「望むところや〜!」
強くなった明義くんに豊臣くんが太刀打ち出来るのかというのは置いておくとして、明義くんが稽古に乗り気になってくれたことがなにより嬉しかった。しかもパフェをペロリと食べ終えてそのまま稽古に向かっていったのだ。その姿に感動すら覚えた。
「ありがとう。」
彼はそんなつもりなかったらしいがとにかく感謝の気持ちを伝えたかった。
「明義くん、今まで稽古に自主的に行くことなんてなかったから。豊臣くんのおかげ。それに豊臣くんの意外な一面を見た気がして。」
「俺の事好きになった?」
「違うけど、ちょっと見直した。」
豊臣くんはいつものようにニコニコと笑い、
「……あの子には、何か似たようなものを感じたのかもしれへんなあ。」
そう言ってパフェの最後の一口を口に入れた。___
何があったのかは知らないが、あの時明義くんに告げた言葉は彼の後悔からきているのだろう。そして彼自身もどこかで変わらないといけないことを分かっていた。
「俺は、変わるんや。」
そして今日、その一歩を踏み出した。
「お前、良か男くさ。」
加藤くんは豊臣くんの姿に感激しながらも手加減をすることはなかった。それが彼なりの礼儀であるから。
「負けると思えば負ける……勝つと思えば、勝つ!」
「あの言葉は農民から天下人に成り上がった豊臣秀吉の名言。」
何度も立ち上がってきた豊臣くんは限界近く、加藤くんも体力を消耗し始めている。これが決めの一手だ。お互いが本気でぶつかり合い、豊臣くんは再び倒れた。
「立て!」
「立て、秀吉!」
残り時間、あと30秒。
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もちゃ(プロフ) - みーさん» コメントありがとうございます。こだわってるところ褒めていただけて光栄です。楽しみにしてくださってることも嬉しいです、ありがとうございます。 (2022年9月9日 3時) (レス) id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまい申し訳ございません。好きと言っていただけて嬉しいです。応援もありがとうございます、頑張ります。 (2022年9月9日 3時) (レス) @page22 id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
みー - このお話の2人の距離感が私も好きです!これからも楽しみにしています! (2022年9月5日 10時) (レス) id: ef372782cb (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 面白くて好きです!更新頑張ってください! (2022年8月16日 23時) (レス) @page19 id: 2a8d4606f0 (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ(プロフ) - moka、さん» コメントありがとうございます。試行錯誤しながらですが最初のうちは近すぎず遠すぎずを目指しているのでそんな2人の距離感を好きって言ってもらえて嬉しいです。感想、お気遣い、ありがとうございます。 (2022年8月11日 2時) (レス) id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちゃ | 作成日時:2022年7月29日 15時