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ホールでは加藤くんと豊臣軍が向かい合わせに立っていた。織田くん、みやびちゃん、私は2階から見守る。加藤くんは本当に1人で戦う気だ。

「あんた達は全員手負い。それで本当に俺に勝てると思っとーとか!」

加藤くんが戦闘態勢に入ると、1階にいるギャラリーが盛り上がった。豊臣くんを卑怯だという声も飛んでいる。そんな中で一人で余裕だと伊達くんが一歩前に出る。

すると、豊臣くんはそれを止めた。

「俺にやらせてくれ。」

彼の発言に周りは騒然としている。豊臣くんは加藤くんの前へと足を進める、覚悟は決まっているようだ。……頑張れ、豊臣くん。

「本当にいいくさ?」
「ああ。」

とは言っても彼の腕っ節が弱いのは事実。傷が増えていく豊臣くんは痛々しく目を塞ぎたくなる。しかし倒れても何度も立ち上がる彼の姿から目が離せなかった。

「秀吉、このままだと負けるぞ。」
「くんな、これは俺の戦いや!」

彼の印象が変わったのは、あの甘いものを食べに行った日。

___お店に入ろうとしたところで、父が営んでいる道場の練習生の男の子が一人、慌てた様子で駆け寄ってきたのだ。

「明義くん?」

すぐに複数人の追手が来たため彼は私の後ろで縮こまった。詳しく聞いた訳では無いが、彼らが端々に口にした言葉を繋ぎ合わせた限り小学生でよくあるいざこざと言ったところだろう。そんな彼らをお得意の口八丁で追い返したのは豊臣くんだった。その姿に明義くんは憧れを抱いてしまったらしい。

「明義くん、稽古は?」

3人で甘味処に入りパフェを頼む。豊臣くんの隣に座った彼は私の問いかけにギクッと肩を鳴らした。

「またサボったの?」

明義くんは小柄で気が強い方でも力がある方でもない。愛嬌の良さから道場の年上組に可愛がられてはいるが、同じ階級での手合わせとなるとボロボロだった。

「でも僕、お兄ちゃんみたいに頭使って勝ちたい!!そっちの方がかっこいいもん!!」
「そうかそうか〜。どっちであろうと、勝ちは勝ちやからな。」

目をキラキラ輝かせる明義くんと、嬉しそうにパフェを頬張る豊臣くん。本当にこれで良いのだろうか……。

「でも。」

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もちゃ(プロフ) - みーさん» コメントありがとうございます。こだわってるところ褒めていただけて光栄です。楽しみにしてくださってることも嬉しいです、ありがとうございます。 (2022年9月9日 3時) (レス) id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまい申し訳ございません。好きと言っていただけて嬉しいです。応援もありがとうございます、頑張ります。 (2022年9月9日 3時) (レス) @page22 id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
みー - このお話の2人の距離感が私も好きです!これからも楽しみにしています! (2022年9月5日 10時) (レス) id: ef372782cb (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 面白くて好きです!更新頑張ってください! (2022年8月16日 23時) (レス) @page19 id: 2a8d4606f0 (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ(プロフ) - moka、さん» コメントありがとうございます。試行錯誤しながらですが最初のうちは近すぎず遠すぎずを目指しているのでそんな2人の距離感を好きって言ってもらえて嬉しいです。感想、お気遣い、ありがとうございます。 (2022年8月11日 2時) (レス) id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちゃ | 作成日時:2022年7月29日 15時

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