46 匿いモス ページ46
「鶴見中尉殿は本当に素晴らしいお方なのだッ！貴様のような小娘に理解するのは難しいかもしれないが鶴見中尉は私にとって…」
見た覚えのある小麦肌の男が早口で捲し立てる。
第七師団にお呼ばれしたあの日。鶴見との距離が近い、などと言いがかりをつけて突っかかってきたあの青年、鯉登音之進少尉である。
鹿児島の薩摩の方の出身らしい。Aは知らない土地だ。
さっきから…というか再会してからずっとこの調子なのだ。
「ワーすごいすごい」
「…！そうだろう、そうだろうッ！Aは女子にしては話の分かる奴だな！」
適当に相槌を打って適当に話を合わせていると、いつの間にか気に入られてしまった。
聞き上手はモテるのだ。
月島軍曹に半ば攫われて、小樽の鶴見中尉に再会した時は本当に度肝を抜かれた。
てっきり酷いことをされるのだとばかり思っていた。
しかし実際は違った。暖かい食事に綺麗な着物を着せてもらい、ふかふかの布団を用意してもらった。
どうやら、尾形上等兵に無理やり連れ去られたと思われているようだ。
というよりもそういう事になっているのだろう。
鶴見は今までには会った他の誰よりも底が知れない嫌な雰囲気がある。
本当は無理やりでもなかったこと、脱走兵に手を貸そうとしていたことなど、全てお見通しなのかも…と思えてくる。
一通り持て成されたあと、今度は鯉登に連れられて旭川へとやってきていた。
尾形がまたAに危害を加えるかもしれない。という建前。
いくらダイジョブです〜と言っても聞き入れてもらえなかった。
それどころか、これを持って出発しなさい。と渡されたおむすび弁当を受け取らないわけにはいかず。
おむすびは塩加減が絶妙で絶品だった。思い出すと腹が鳴るほど。
そんなこんなで今、旭川にいる。
第七師団二十七聯隊の兵舎。Aはそこに匿われていた。
別に尾形に追われているわけではない。大丈夫なのに…。
それで、この男。鯉登音之進。
歳が近いせいかそれとも聞き上手なせいか。Aに懐いているようだ。
尊敬する上官、鶴見中尉殿のお話をそれはそれはもう、毎日Aに聞かせにやってくる。
「あ〜あ。お昼何かなー…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ゴールデンカムイ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メルテア(プロフ) - 炊きたてのお米くらいあっつあつじゃん？でもう笑いすぎて感想書いちゃいましたww主人公面白すぎるwww神作品ありがとうございます！！m(_ _)m (8月31日 8時) (
レス) @page28 id: 296f866ede (このIDを非表示/違反報告)
Chloe(プロフ) - 蛙奈さん» 蛙奈様へ。ありがとうございます！私の中で鯉登は普段ピュアピュアなのにたまに男らしさを見せるカッコイイ奴って感じだったりします！鯉登もちょいちょい絡んできますのでまた読んでいただけると嬉しいです！ (2021年10月10日 20時) (レス) id: b0de3b5808 (このIDを非表示/違反報告)
蛙奈(プロフ) - 鯉登少尉のピュアさに悶絶して思わずコメントしました…私自身鯉登少尉推しなのでとても嬉しいです！頑張ってください！ (2021年10月10日 16時) (レス) id: dbf954f045 (このIDを非表示/違反報告)
Chloe(プロフ) - 蛙奈さん» 蛙奈様へ。はじめまして！コメントありがとうございます！嬉しいです。色仕掛けちょいちょい出す予定です(笑)素敵なご感想ありがとうございました！ (2021年10月7日 19時) (レス) id: b0de3b5808 (このIDを非表示/違反報告)
蛙奈(プロフ) - コメント失礼します。とても面白いです！特に尾形の色仕掛けが色んな意味でドキドキしました！主人公の食いっぷりも読んでいてお腹が空いてしまいます。素敵な作品！更新待ってます。 (2021年10月7日 17時) (レス) id: dbf954f045 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Chloe | 作成日時：2021年10月5日 1時
