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覚えてるもんやなあ、と思いながらオートロックをパスして。
賢「、、なんやえらい久しぶりに感じるわあ」
目的の階で降りれば、よく見たドアたちが並ぶ。
久しぶりと言っても、
3ヶ月前くらいに確か来てるはずやねんけど。
そのあとに起こった衝撃からか、遥か遠くの話に感じる。
『Aが劇場に来てない、連絡も取れへん』
そんな話をゆずるから聞いて。
当たり前や、そんなん。"あんなこと"があって。
東京の仕事に疲弊してた、そんなことは言い訳でしかなくて。
連絡は入れてた。たしかに返ってこんかった。
それでも、深追いしてへんかったのは俺で。
情けなくて情けなくて、
俺何しに東京来たんやっけ、なんて考えたりした。
大阪にいつ帰れるのかやたらとマネージャーに確認して、
大阪帰っても自由な時間を作れなくて、
自分の不甲斐なさに嫌気がさした。
賢「ほんま、見取り図には感謝やなあ、、」
…ほんまは自分が暗いとこから掬い上げたかった、なんて
俺には言う権利もないから。
603、のドアの前に立つ。
チャイム、は、いらんねやっけ。
ドアノブを回すと、ガチャっという無機質な音が廊下に響く。
ああ、懐かしいな、この部屋の匂い。
なんて思ってたら、胸の中になにかがぶつかる衝撃。
「けんしろさーーーーーん!!!」
名前を呼んで、抱きついてくる感触が、匂いが、
懐かしいやらなんやらで鼻の奥がツンとなった。
着いたって連絡もしてへんし、
チャイムも鳴らしてへん。
それでもこうやって待ち受けてくれてたことに、素直に驚いて。
賢「、、びっくりしたわあ」
「けんしろさん!けんしろさんやー」
賢「玄関で待っててくれたん?、、体冷たなってるやん」
だいぶ飲んでるのか、タバコとお酒のにおい。
あと、なんなんやろ、柔軟剤なんかな。ちょっと甘いにおい。
賢「、、元気そうで安心したわあ」
「むふふ、元気です」
賢「むふふて」
俺の胸に埋めてた顔が、嬉しそうに上を向く。
賢「…会いに来るん、遅なってもうてごめんな」
「…私こそ、連絡、返せんくてすみません、、」
俺の謝罪を受けて、眉毛を下げて。
賢「…そんな顔せんとって?いっぱい笑顔見せてくれるほうが嬉しいわ」
頬に手を当てると、お酒のせいか少し熱い。
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作者名:よいちょちょちょ丸。 | 作成日時:2022年2月24日 10時