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何回も何回も、ベロベロのあいつを抱えて来た大国町のマンション。
エントランスのオートロックのパスワードも、慣れた手つきで入れる。
リ「…珍し。ちゃんと鍵かけとる」
チャイムを鳴らしても音沙汰なし。
仕方なくドアノブを回してみても、ロックされているのがわかるだけ。
ふぅ、と息を吐き、玄関ドアについている郵便受けに手を入れる。
リ「…安全管理どうなっとるん」
よく芸人が集まるこの家の鍵の隠し場所。
磁石がついたキーホルダーで、ペタッとひっついてる鍵。
鍵閉めてたとしても何の意味もない。
鍵穴に入れて回すと、カチャッと音が鳴る。
チェーンついてたらどうしよ、と思っていたがその心配はいらんかったらしい。
リ「おじゃましまーす、、うお、まじか」
入った瞬間にわかる、澱んだ空気。
不健康すぎるタバコと酒の匂い。
あとわずかな……男物の香水の匂い。
玄関を確認すると、それらしいサイズの靴はなく、香水の主は不在のようで少しホッとする。
リ「おーおー、、すごいなこれ」
廊下に転がるゴミ袋を横目に、リビングへと向かう。
前来た時は、綺麗なもんやったのに。
リ「……A」
リビングのソファに三角座りし、ぼーっと目線を浮かしている姿。
自分が思ってた以上に優しい声で呼んでいた。
「…あ、リリーや」
薄暗い部屋で、不健康な顔して、無理ににへらと笑う。
憔悴しきった姿を見て、心臓がキュッとなった。
足元のゴミ袋やら服やらを足蹴にして近づく。
引きよせるために掴んだ腕は、以前とは比べ物にならない細さで。
リ「……ごめん。もっとはよ来たらよかったな」
「へへ、なにがよ。久々やなあ」
腕の中で、力無く発される言葉と、
頼りないその身体。
「急にどしたん?劇場ちゃうの?」
リ「……」
「言うてくれたら、片付けたのに〜」
リ「……」
「変なリリーやなあ、どしたんほんまに」
リ「…もうええから、一回黙って」
ぎゅっと抱きしめると、力が抜けてカタカタ震える。
「…ぅっ」と小さく息が漏れると同時に、堰を切ったかのように泣き声が響く。
ごめんな、辛かったよな
もっとはよ来るべきやった
こんなんなるまで我慢させてごめんな
安心させる言葉を伝えては、背中をさする。
小さくなった身体から、大きな泣き声が続いた。
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作者名:よいちょちょちょ丸。 | 作成日時:2022年2月24日 10時