許嫁で純愛【呪術廻戦】

四本 ページ5

※軽い流血表現あり
no side





『くｯ……』




式神を呼び出す暇もなく、
Aは必死に呪霊の攻撃を避ける。




『あっ……！』




準一級相当の呪霊の攻撃と、
今日１日の父親との鍛錬がAに牙をむく。


膝が抜け、前のめりに倒れるA。
呪霊はそれを見逃さない。


どころかこうなる事を読んでいた。
Aの疲弊具合を理解して追い回していたのだ。




『ｯ……！！』





苦しげに歪んだ口から激しく息が吐き出される。
地下室であるここに武器は無い。





『(おかしい……おかしいｯ……！！
家には結界が張ってあるはず……！

何重にも張られた結界だから
敷地内に呪霊が入ることは不可能！

ｯなのに……！！)』





Aは冷たい石の床を手で押して
呪霊の攻撃を避けていく。





【ｷﾞｬｷﾞｬｯ!!!】


『ぐ、あっっ！！』





呪霊の爪のような部分が
Aのふくらはぎを貫通する。





『ﾌｰｯ、ﾌｰｯ……』





流れ出す血とニタニタ笑う呪霊を見て
Aは呪霊の入ってきた窓を見る。





『(月の光…！地下室(ここ)は敷地外(・・・)！！！
母屋の北東……つまり"鬼門"に位置するこの地下室は
敷地を囲う結界から飛び出してるんだ！！)』






そう。この地下室は敷地外に造られている。
地下通路を通る関係で結界から出ていたのだ。






『(それならこの呪霊にも納得がいく！
ｯ起きなきゃ、起き上がらなきゃ…………！！)』






力の入らない足腰に鞭打って
Aは何とか呪霊から距離を取って起き上がる。


ひとつ呼吸をする間に
呪霊の逃げ道を塞ぐような攻撃がAを襲う。





『ｸﾞｯ……！！い"っっ……』





血で濡れた足が滑り、攻撃が脇腹を直撃する。
ボタボタと石の床に血が溜まっていく。


思わず脇腹を抑え座り込むA。
８歳の体では全身の疲労は限界を超えもう動けない。


為す術もなく、Aは呪霊を睨みつける。
呪霊はケタケタと笑って勢いよく攻撃を繰り出した。








──────バチン








そう大きな音が地下室に響き渡る。
Aは変わらず呪霊を睨みつけていた。








『………………
髪の毛、自分で切れなかったからありがとう。』







三本の爪のうち、一つはAの髪を切り、
もう二本はAの真正面で止まっていた。







『"変化・不動明王"……！！』






何十本と切れた髪の毛が寄り集まって
一人の大きな明王と化した。

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