一本 ページ2
貴女side
──────私は
……「神童」かどうかは知らないけれど、
兄や、同い歳の子ども達とは違うとは分かった。
目の前に浮かぶ巨大な手首を押しのける。
こうやって、いつも何かが家にいるのが見えるし。
古式A5歳。
好きな食べものはおまんじゅう。
ある日突然、全てがつまらなく見えた。
全てが分かるから全てがつまらなくなった。
同時に流れ込む膨大な情報に頭がガツンとなった。
持っていたお気に入りの湯のみを落として割った。
お手伝いさんが来ても私は黙って見ていた。
いつもなら謝ったし、
何なら湯のみが割れて悲しいと思ったと思う。
でも思わなかった。
どうでも良かった。
私の家はかの御三家の遠い遠い親戚らしい。
下手をしたらお家取り潰しになるかもしれなかった。
だからか父は保身馬鹿で、母はそんな父を崇拝して、
呪力の少ない兄達は蔑ろにされていた。
変わりもしない未来に抗おうともがいて、
次期当主の座を狙う兄達が哀れだった。
この家では、この世界では、
呪力を持たぬ者は長男であろうと用は無い。
呪力を持っていても女であれば、
同じように用は無い。
父と母は呪力が強いと評判だが、
2人の呪力を足して二乗しても私には到底及ばない。
…………用は無いと言ったが、
私はいずれ、何らかに利用されるだろう。
呪力が多くて、力も強いから。
どんなに隠しても隠しきれないから。
いつかは、見つかる。
「──────!!」
『……』
痛い。
父に掴まれた腕をぼんやりと見る。
痛いから離して欲しい。
「早く術式の練習をしなさい!」
『……はい。』
逆らっても、無駄。
父は私を"最強"の術師にしようとしている。
『…………無駄なのに、』
私は"最強"にはなれない。
なりたくもない。
.
お父様、わたしはお外であそびたいのです。
つらくて、くるしい術式の練習はイヤです。
こんなむずかしいことを考えたくないのです。
ああ、わたしよりずっとずっと強い人がいて、
その人がわたしの近くにいたなら、
わたしはその人のためにもっともっと頑張れるのに。
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りんごりんご - え、神ですか?こんなに作品の組み立てが上手なの、なかなか無いですよ!神ですか?いや神ですよね? (2021年1月31日 18時) (レス) id: f29ad8ba49 (このIDを非表示/違反報告)
くらくしょん - すごくお話をかかれるのが上手なんですね!、読んでいてとても楽しかったです、これからも頑張ってください (2020年12月6日 16時) (レス) id: 15035c8d2a (このIDを非表示/違反報告)
百 - 深凪さん» めっさ分かる!唇ちょっとピンクいのがめっちゃ可愛くて、五条先生のカッコいい感じとか余裕がある感じとのギャップヤバくてマジえらい。 (2020年11月30日 19時) (レス) id: 78401eb32b (このIDを非表示/違反報告)
深凪 - アニメ作画良すぎですよね!!私も五条先生の唇ぷるっぷるやんって思ってたので同じこと思ってる人がいて嬉しいです(笑)小説とっても面白いです!更新待ってます!! (2020年11月18日 22時) (レス) id: a6413cd937 (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 凄い面白いです!無理のない範囲で更新頑張って下さい! (2020年11月18日 16時) (レス) id: 32b6d86f2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 22時