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no side
『私、テニス部に入って良かったよ。
ありがとう、幸村。』
「……!
こちらこそ入ってくれてありがとう。
Aを誘って正解だったよ。」
にこ、と笑うA。
『ふふ、まだ序盤なのに別れ際みたい。』
「あはは、確かに。
まだまだ行きたい所はあるから付き合ってね。」
『幸村部長の仰せのままに。』
胸に手を当てるAに幸村の顔が曇る。
Aが首を傾げるとゆっくり口を開く幸村。
「……精市って呼んでよ。」
『え?』
「俺はAのこと名前呼びなのに
Aは一年からずっと苗字呼びだろう?」
『まぁ……?』
「"今さら"とかそんな事ないからさ。」
『心を読まれた……だと……?』
いつもよりずっとずっと優しく微笑む幸村に
再度首を傾げながらもAは覚悟を決める。
『えー……っと、せ、精市……?』
「…… 」
『え、ちょ、何か言ってよ!何で無言!?』
「(思ってたより……結構、照れる…………)
あぁ……うん、ごめん。ありがとうA。」
『……もう、』
Aは変わらず笑顔の幸村を見て
襲ってきていた羞恥心が吹き飛ぶ。
『ほら、じゃあ次行こ!
行きたい所、まだまだあるんでしょ?』
「うん。行こうか。」
朝と同じようにサッと手を引く幸村。
Aはまだ少し恥ずかしさを感じながらも
引かれるがまま後に続いた。
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『本物の中華街だ……!!』
「初めて?」
『初めて!』
Aは煌びやかな門を見上げて声を漏らす。
「A、肉まんは好き?」
『好き!』
「じゃあ食べようか。」
幸村の手には大きな肉まんが2つ。
Aが肉まんを好きなのは調査済みだ。
『んん……美味しい……!』
「ふふ、」
美味しそうに肉まんを頬張るAを見て
幸村は優しく微笑む。
『……?どうしたの?』
「ううん。
Aは美味しそうに食べるなぁ、って。」
『えっ、』
ササ、と口元を隠すA。
幸村は素知らぬ顔をして自分の肉まんを齧る。
『(見られてた……の?)』
「これ食べ終わったらあそこのお菓子屋さんとか
行ってみる?」
『行く。』
幸村はAの好みを熟知している。
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沙羅(プロフ) - I like chocoさん» コメントありがとうございます!気まぐれ更新ですが頑張りますねー! (2020年3月9日 14時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
I like choco - お、面白い!続き待ってます! (2020年3月9日 13時) (レス) id: 1b7c1dd1e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙羅 | 作成日時:2017年6月13日 23時