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『……父さんは父さんなんだけどね。』




サーブ権を取られたAは

ベースラインでボソリと呟いた。





「か、加減しないから……!」


『うん。』





ドッ、と放たれたサーブ。

Aも慌てず正確に打ち返す。





『さすがに県大会出場者となると……って感じ。』


「舐めないでよね……!!」


『その言葉、そのまま返すよ。』





佐藤はパワー寄りのプレイスタイルだった。

Aの持つラケットがギシリと音を立てる。





「はぁっ!!」


『!』





スパンっと音がして

Aの真横をボールが通り抜ける。





「15−0!」


『ふーん……なんか、懐かしい感じ。』





ギュ、とグリップを握り直すと

Aは前を見据える。


.





「あぁっ……1ゲーム取られた……」


「水谷もさすがに佐藤には勝てねぇか……?」


「だって佐藤さん県行ってるもんね……」


「じゃあ水谷さんマネ辞めるの……!?」





Aはふん、と鼻を鳴らしてボールを掴む。

相変わらず汗はかいていなかった。





「あれ……本気に見える?」


「「「全然。」」」


「だよね。」





幸村の問いに首を振るR陣。





これはAの悪い癖だった。

天国から地獄へ叩き落とすのを楽しむ

なかなかに良い根性してる。




『サーブいきまーす。』


「やぁっ!」




佐藤のリターンを拾い更に鋭く打ち返す。




「わ、私気付いちゃったの。
アナタ、とっても上手だけどラリーは下手。
回転が得意みたいだけど、他は並。」


『……』


「横振りのボールは、見逃しがち。
横移動、苦手なんじゃない?」


『……かもね。』





Aを左右に振る様に

佐藤はボールを左右へ交互に打つ。





『でもさァ……私もアナタの弱点みっけ。』


「!」


『パワープレイだから振りかぶるのが大きい。
つまり体に近いと全力を出せないんだよね?

今までは皆、強いボールを恐れて横に打ってきたから
逆に利用して倒してた。

…………どう?体の正面に来るボールは。』


「ッ!!」





Aの言葉通り、

ボールは佐藤の正面ばかりに向かう。





「そ、それでもっ……私は強いの!!」


『!』





佐藤も足掻いた。

必死に自分が動いて強いボールを打つ。

そのせいで汗だくだったが。





『はぁ……そんなに前向きなのに
何で陰湿なことするのか分からないや。』





ドッ、と重たい音がして

佐藤のラケットが弾かれた。

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沙羅(プロフ) - I like chocoさん» コメントありがとうございます!気まぐれ更新ですが頑張りますねー! (2020年3月9日 14時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
I like choco - お、面白い!続き待ってます! (2020年3月9日 13時) (レス) id: 1b7c1dd1e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2017年6月13日 23時

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