記憶(R.Miyadate) (ページ15)

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…

「誰かぁ、誰か来て！」

廊下から大きな声がして、涼太さんの目付きが一瞬で険しく変わった。
普段穏やかな彼も武士なのだと、身分の違いを感じて少し心が痛くなる。

「…何かあったか？」

「なんでしょう、」

部屋の向こうがざわついてきて、泣き叫ぶ声もする。

これは。
ただ事ではないと、怖くなって思わず涼太さんの袖を掴んだ。

「大丈夫だよA。お前のことは、守るから。」

優しく頭を撫でると、おでこに口づけてくれて。
少し考えたあと、様子を見てくる、と部屋を出ようとするから。私も彼のあとをついて部屋を出た。

「何があったんですか？」

「宮舘様、清菜が、息をしてないんです！」

「清菜？」

「清菜っ、」

涼太さんと私の声は同時だったが、私の足は清菜の部屋に向かっていた。

清菜。
いつも痛み止めのお薬が欠かせない清菜。

ひとつしか飲んではいけないと言われているのに、時々ふたつ飲んでいたこともあった。

もしかして。病が、悪化したのだろうか。
涼太さんが私の腕を強く引く。

「夕霧っ、見るな！」

「清菜？…清菜ぁ。」

彼女は、もうすでに。息を引き取っていた。

側に散らかる薬の包みが、ひとつ、ふたつ。いや、一目見ただけでも普通の量でないことはわかってしまった。

「どうして…どうしてこんな…。」

「…、」

涼太さんは泣き崩れる私を軽々と抱き上げて、部屋に連れていって布団の上に寝かせてくれた。
泣きながら眠ってしまったみたいで、気がつくと夜中になっていて。うちわであおいでくれる風が時折頬にあたって心地いい。

「…もしや、涼太さん？」

「A、気がついたか。良かった。」

「ずっと…側にいて下さったんですか？」

「帰るわけないだろ。」

優しさも愛も、全部この人が教えてくれる。

清菜は、なんとか痛みを止めようとして。薬を飲みすぎたことが原因で亡くなったと医者が言っていたと涼太さんが教えてくれた。

「清菜…。」

薬も、量を誤ると毒になってしまうのだと。どこかで聞いたことがあったっけ。
お薬を飲むときは、気を付けなきゃいけないな。

ただ。そのときの私の心の中には。
いけない考えも、よぎってしまっていた。

大好きな人の腕に抱き締められながら。