記憶(R.Miyadate) (ページ13)

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13(R.side) ページ13

(R.side)

俺は都合がつく限り、Aのもとに通った。
ただゆっくり、彼女と話をして過ごす。

俺にとって彼女は遊女ではないから、体は求めない。それについて、Aが少し誤解をしていたこともさっき分かった。

「…私のこと、抱いてくださらないんですか？」

「A？」

「…すみません、もう綺麗な体ではないのに。今の言葉は忘れてください。」

「違う、誤解しないでほしい。俺は夕霧の時間をもらっているのではない、Aに会いに来てるんだ。だから、側にいてくれるだけでいい。」

「涼太さん…。」

「そういうことは夫婦になってからのお楽しみにとっているんだけど、誤解させてしまったかな。」

そっと、肩を抱き寄せて。幼い頃の思い出話をした。
生まれ育ちがちがっても、人は心を通わすことができるんだな。

こんなに愛しい人を抱きたくないわけがない。
日々募る思いをもて余しているのも事実だ。

少し、長居して遅くなってしまったな。江戸の夜は、暗い。今夜は特に、月が隠れているせいで暗い夜になっていた。

そして。

吉原を出てすぐから感じていたこの違和感。

「誰だ？」

声を出すと、物陰から男たちが姿を現した。行灯が、刀を照らし出す。

やはり。狙われていたか。

恐らく、高利貸しのことを調べだしたからだろう。

「お命、頂戴する。」

「…なるほど、5人か。」

彼らは構えからしてなかなかの腕前のようだ。

しかし。
俺はここで死ぬわけにいかないんだ。

「どけっ！」

一人、また一人、俺の邪魔をするやつを斬った。

かすり傷を負ってしまった俺は町医者に助けを求めると、手当てをしてから照を呼んでくれた。

「涼太…、あれだけ一人で行動するなと言っただろ。」

「Aのとこに行ってたんだよ。…じゃあ、お前も吉原に行ってくれるのか？」

「俺は…、っ、わかったよ店の前で待つから次からは絶対俺を呼んでくれ。」

「ははっ、頼もしいな。」

「涼太、もっと自分を大事にしろ。」

でもこれではっきりした。

確実に金を使って俺とAの縁談を壊したやつがいる。
そしてそれは。

俺の母上なのだと。