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『……悠くん！なんで…？』
悠「いや、今日は仕事が早く終わってたから迎えに行こうかなって。メール送ったんだけど。」
慌ててポケットからスマホを取り出すと、通知が来ていた。
悠くんの視線が、ゆっくりと長尾くんのほうに移る。
『…あ、お客様。カフェの！』
悠「ああ、そうなんだ。どうも、飯田です。」
謙「…こんばんは、長尾謙杜といいます。えっと、Aさんのお知り合い？」
長尾くんがわたしのほうをちらっと見る。
『……えっと、この人は……』
悠「Aの婚約者です。」
悠くんがわたしの言葉を待たずに答える。
謙「…そうでしたか。」
『思ってたより道が暗いから、駅まで一緒に帰ってくれてたの』
不穏な空気を察して、言い訳みたいな言葉を並べる。
悠「そうだったんだ。ありがとう長尾くん。でも、Aは俺と帰るので。では」
悠くんが力強くわたしの肩を抱いて、駅の方へ歩き出す。
その横顔は、少し怒っているようにも見える。
坂を下りきって、明るい道に出る。
置いてけぼりにしてしまった長尾くんのことが気になって振り返ると、まだ坂の途中に立っているシルエットだけが見えた。
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作者名：雪 | 作成日時：2022年11月24日 4時
