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彼女を家まで届ける途中、やけに重い空気が足に絡まり、その歩幅を狭くさせた。
もう少しの距離が、ずっと遠くの、長い長い道のりのように感じられ、息苦しささえ覚える。
『ここで、大丈夫です。ありがとうございました』
こじんまりとした白いマンションの前で、彼女が足を止めた。
「いえ、」
別れ際の言葉なんて知らない俺は、言葉を詰まらせその二文字しか言えなかった。
『…じゃあ、』
そう言って遠くなるヒールの音。
なにか、ちゃんと彼女に言うべきことがある気がした。
このまま帰るのは、なんでか違う気がする。
「…っあの！」
何を言うべきか定まってない俺の口が、
「明日、また、」
勝手に言葉を紡いでゆく。
「DVD、借りに行きます」
言って、俺の方に振り返った彼女と視線が重なる。
『…待ってます、』
泣きそうな顔が、小さく微笑んでいた。
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作者名：るるり | 作成日時：2018年4月28日 12時
