人魚姫2 (ページ22)

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「すごーーーっ！」

一面ガラス張りの水槽の中、煌びやかで優雅に泳ぐ魚の群れの前で、彼が少年のように楽しそうに笑っている。

『この魚、ベクヒョンさんみたい…』

水槽と一体化しちゃうんじゃないかって思うくらい顔をくっつけた彼を横目に、私は1匹の魚を見つめ、ぽつり呟いた。

小柄で、多分その水槽の中で1番小さいであろうその魚。でも、どの魚よりもずっと美しい赤の鱗を持っていて、それが水を掻き分ける度にキラキラと輝き、優しいピンクに色を変え、またより深い緋へと変化していく様は、目を奪われる。

まるで、今私の隣にいるこの人みたいに…

「んー。そうかなぁ、」

さっきまでの笑顔とは別に、ふっと彼が目を細めた。

「…俺は、そんなに綺麗じゃないから」

私は、その言葉の意味を知らない。

今後、知っていくのかどうかも分からない。

分からないけど…

この時の私はただ、彼の冷たく揺れる瞳の奥に隠れた秘密にも気づけないほど心に余裕なんてなかった。

「ねぇ、それよりさ、そろそろベクって呼んでよ」

水槽からパッと顔を離した彼の目が、ふいに私を捉える。

『…っ、あ、うん、』

突然に迫った綺麗な目。

頷くしかできない私を覗き込んだベクは、満足そうに微笑んだ。

「俺もAでいいよね、」

息するみたいに自然に、ベクは私の名前を呼んだ。

「あ、ね！イルカショー始まるって！」

ドキドキする。ベクといると、胸が熱くなって、苦しくて。

『…っあ、』

掴まれた腕が、引き寄せられてゆく。

あなたの方へと、

熱い。

あなたの体温が伝わって、私まで染まりそうだ。

あなたと同じ色に染まって。

まるで、

あなたの中に、溶けて消えてしまいそう。

『…ベク、』

どうして名前を呼んだのか、

「…え？」

振り返ったあなたの顔が、すごく驚いていて。

『よんで、、呼んでみただけ、』

掠れた声が、あなたには届いてたかな。

「なにそれ(笑)」

そう言って、ベクは眉を少し下げて笑った。

幼くて、眩しい笑顔。

私の胸は、もうどうしようもなく、苦しいです。