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『…すごい、これ。
千年も前の…』
記された日付は想像を超える昔。
筆で描かれた強弱のついた滑るような筆跡は、現代では滅多に見ることの無いものだった。
幼いながらに叩き込まれた教養が幸いして、カタカナの多い手記は簡単に読むことが出来た。
綴られているのは何気ない誰かの日常。
その誰かはどうやらある家の当主なようで、廃れていく己の家の嘆きを書き連ねていた。
けれどその中にもささやかな幸せはある。
一目惚れをした《サイアイ》、名前の分からない《ユウジン》、いつもトラブルを起こす《アホウ》＿＿日誌を読む手は止まらず、時間を気にするのも忘れていた。
白み始めた空に気づくことも無く、人魂が照らしてくれる明かりを頼りに日誌を読み進める。
そして、一際硬い音をさせたページ。
一番最後のそのページは水に濡れたようにシワになっていて、所々文字が滲んでいて読めなかった。
そして何より、破かれたその一つ前のページ。
命を狙われている《アホウ》を助けようと《ユウジン》と手を組んで、その内容を隠すような＿＿
『［ヒトクシケイノシッコウガキマッタ］…ヒトクシケイ…死刑？』
スマナイ、と謝罪の文字とともに書き殴られた文字、それを最後に、日記は白紙になる。
パラパラとページを捲っても、もう何も書いていない。
一体何があったのかとこれを書いた誰かのことが気になって、本から顔を上げた時に、自分の背後にかかる影に気付いた。
人魂の照らす明かりに落ちる影は二つで、おかっぱ頭は私のもの、そしてもうひとつ、異様に伸びたそれは、私のものじゃなかった。
『ぁ』
ゆっくり振り向く。
赤い、真っ赤な蛇の目がこちらを見据えていた。
体が芯から凍えるほど恐ろしかったのだと聞いた事のあるその見た目。
人魂の光を反射させるその白銀の髪を持つその呪霊は、今は叔父の体に身を潜めているはずなのに。
手が恐怖に震えて、本が音を立てて床に落ちた。
目線は、それを意図せず追ってしまって。
［ユウジンヘ。コレヲオクル。］
閉じられた本の裏表紙、蛇の目を持った何かがやけに白い手をそれに伸ばした。
壊れ物を扱うようにそれを拾い上げて、冷たい何かが頬に触れる感触。
一際大きく跳ねた心臓と危険だと警鐘を鳴らす脳に反して、意識は闇に溶けた。
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なぎしば(プロフ) - 改革さん» ご指摘ありがとうございます。確認したところ訂正すべき箇所が分からなかったのですが、具体的にどのセリフか教えて頂けますでしょうか？ (4月20日 0時) (
レス) id: 520c46c8a4 (このIDを非表示/違反報告)
改革 - 三話の一方通行って話の中のセリフがおかしかったです。 (4月18日 9時) (レス) id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 作者さんの素晴らしい語彙力で、戦闘シーンの緊張感などリアリティ満載の作品が楽しめました！とっても面白いです、ありがとうございました。 (2月25日 10時) (レス) @page33 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしば(プロフ) - わたあめさん» 感想を頂けてとても嬉しいです！更新頑張りますので、これからも飽きずにお付き合い頂けたら幸いです！ (5月14日 16時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 凄く面白かったです！テスト前なのに一気見しちゃいました笑更新頑張ってください！！ (2023年5月11日 0時) (レス) id: ddaf0618b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なぎしば | 作成日時：2023年2月7日 17時
