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気付けば自分は真っ暗な部屋の中にいて、何も見えない空間の中で感じたのは呪霊の気配だけだった。
呪力が見えるからこそ分かるこの部屋の異質さ、それに膝が笑い、ずり、と後ずさるも足首を掠めた生暖かい感触にその場から動けなくなった。
恐怖に従いボロボロと溢れる涙を拭うことも出来ずにただしゃくりあげていると、ぼんやりと暗闇の中に光る小さな青い玉を見つけた。
ゆらゆらと揺れるそれは人魂と似ていて、私は思わず呼吸を止める。
呪霊に違いないそれは、けれど私を襲うことはせず、幼い私の周囲を一周ぐるりと回るとこちらの手を引くように更に奥の空間へ私を導いた。
暗示がかけられたかのように__それこそ呪われた屍のようにフラフラとそのまま進めば地下へと下る階段があって、その先で見た光景に私は息を飲んだ。
『本、いっぱい…』
書庫特有の、古い本の匂いで噎せ返る空間。
八畳程しかない部屋には、所々カビの生えた木製の棚に所狭しと本が敷き詰められていた。
この家で書庫と言えば、母屋にまた別の部屋が設置されていた。
ここよりもずっと広い、警備が厳重に施された場所。
呪霊が守っているんじゃなくて、ちゃんと月待の人間が四六時中見張っていたそこに入ったことがあったのは、家にいた間は片手で数え切れるほどしかなかった。
多分この場所は、誰も知らない。
直感的に私はそう思って、秘密の部屋なんだと、泣いていたのも忘れて心を躍らせた。
人魂の形をした呪霊は再び私のところにやってくると、ある一冊の本の元へ私を連れていく。
それに従って手に取った本は、紐で止められた、酷く黄ばんだ誰かの日誌だった。
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なぎしば(プロフ) - 改革さん» ご指摘ありがとうございます。確認したところ訂正すべき箇所が分からなかったのですが、具体的にどのセリフか教えて頂けますでしょうか? (4月20日 0時) (レス) id: 520c46c8a4 (このIDを非表示/違反報告)
改革 - 三話の一方通行って話の中のセリフがおかしかったです。 (4月18日 9時) (レス) id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 作者さんの素晴らしい語彙力で、戦闘シーンの緊張感などリアリティ満載の作品が楽しめました!とっても面白いです、ありがとうございました。 (2月25日 10時) (レス) @page33 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしば(プロフ) - わたあめさん» 感想を頂けてとても嬉しいです!更新頑張りますので、これからも飽きずにお付き合い頂けたら幸いです! (5月14日 16時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 凄く面白かったです!テスト前なのに一気見しちゃいました笑更新頑張ってください!! (2023年5月11日 0時) (レス) id: ddaf0618b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぎしば | 作成日時:2023年2月7日 17時