# ページ41
.
__単純な話、条件の大小が釣り合っていなかったのだ。
クロコダイルの目的は、言うまでもなく白ひげの殺害。
しかし、彼は途中でエース奪還の援護に回った。
つまり途中で彼の目的の一部にAの目的が重なったのだ。
元より人を信じないクロコダイルの不審が積もりに積もった結果、ほぼあの時縛りを成立させるための信頼の回復は不可能だった。
その状態で条件を飲み込ませるのは、例えAの方が条件の数自体は多くても不釣り合いとなる。
ただ単に相手が悪かったと言えばそこまでだが、呪術師と海賊では勝手が違うものである。
裏切りの中で生きてきたものと、仮にもひとつの組織で生きてきたものとの間には決定的な価値観の齟齬が生じ兼ねない。
結果として、Aは彼女自身の目的であったはずのエース奪還の目的がクロコダイルと擦り合わさったことにより、元より大きかった条件の負荷は更に増し、《エースを助けなければ死ぬ》というペナルティがついた。
…元の世界とは勝手が違うのだからしょうがない、と言ってしまえばそこまでなのだが。
今回の件についてはちゃんと話した方がいいかと件は大人気なく身勝手に目くじらを立てたことを反省するが、謝るのも癪な話。
毎度毎度Aが無茶をする度に死なないかとひやひやするこちらの身にもなって欲しいものだと、やはりどうも機嫌が悪くなる。
Aの意識があるうちは彼女を治癒することは出来ない。
彼女が眠りについたり気絶か何かで意識を手放さない限り、件は彼女と体の主導権を入れ替わって傷を癒せないのだ。
いくら死んでいる状態から治せると言っても時間の経過が過ぎるほどそれは難しくなる。
今回は間に合ったから良いとはいえ、一体いつこの綱渡りが失敗するかは分からない。
件は顔を覆っていた大きな手をずらし、顕になった左目で凪いでいる足元の水を見た。
そこに波紋を作るのは簡単だ。
涙の一滴でも落とせばいいのだから。
でも、それは泣くことの出来る人間の特権。
見えない玉座に座り続ける件__その“呪霊”がそこに波を作るには、とっくの昔にそんなものは枯らしてしまっていた。
775人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なぎしば(プロフ) - 改革さん» ご指摘ありがとうございます。確認したところ訂正すべき箇所が分からなかったのですが、具体的にどのセリフか教えて頂けますでしょうか? (4月20日 0時) (レス) id: 520c46c8a4 (このIDを非表示/違反報告)
改革 - 三話の一方通行って話の中のセリフがおかしかったです。 (4月18日 9時) (レス) id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 作者さんの素晴らしい語彙力で、戦闘シーンの緊張感などリアリティ満載の作品が楽しめました!とっても面白いです、ありがとうございました。 (2月25日 10時) (レス) @page33 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしば(プロフ) - わたあめさん» 感想を頂けてとても嬉しいです!更新頑張りますので、これからも飽きずにお付き合い頂けたら幸いです! (5月14日 16時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 凄く面白かったです!テスト前なのに一気見しちゃいました笑更新頑張ってください!! (2023年5月11日 0時) (レス) id: ddaf0618b1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なぎしば | 作成日時:2023年2月7日 17時