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ページ39



「馬鹿は嫌いじゃ」

『__』

「何事にも道理がある。

それを解せよ。

凡愚にやる情けは無い」




いつになく冷徹な、こちらを咎める視線が私を射抜いた。

私がそれに怯む暇も与えず、件は畳み掛けるように言葉を重ねる。




「森羅万象、全てのことを疑え。
でなければ今の其方は使えん」

『…んな科学みたいなこと言われても』

「…月待は大法螺吹きじゃ。
自分の目で見たものだけを信じると良い」




不意と逸らされた赤の双眸は既にこちらに興味を無くしていて、私は久々に間近で浴びた件の強烈な殺意に体を強ばらせた。


水音もさせず滑るように歩く件の背を黙って見つめていれば、ぴたりと立ち止まった彼は振り返らないまま二本の指を立てた手を持ち上げる。
くい、と鋭利な爪の伸びる指先が一度曲げられると、何者かに襟元を掴まれた時のように体が宙に浮いた。




『かはッ』

「いつまでここにおるつもりじゃ」

『よ、びだしたのは、そっちの癖に…ッ』

「…愚骨に話すことなど無くなった。
さっさと去ね」




いつになく不機嫌な件は横暴もいいとこだ。


彼が突然へそを曲げたように話を聞かなくなった理由には皆目見当もつかず、私はその原因を探そうとして眉根を寄せた。

いきなりこちらを凡愚だ阿呆だと罵り、軽口程度に反抗を見せれば分かりやすく更に機嫌を悪くする。

普段と対して変わらないはずの会話の応酬に、一体何がそこまで彼の機嫌を損ねる要素があったのだろうか。



隠す素振りも見せず不愉快そうな顔を向けてきた件の姿が霞んでいく。
酸欠の状態なのだと、すぐに気付いた。

彼には私を殺すつもりは毛頭ないだろうから、私の意識をここから閉め出せればこの苦しさもいずれなくなるはず。

先程までの戦闘の疲労も相まって悪態をつく気も起きず、私は黙って霞んでいく視界を受け入れた。




「__」




冷淡な、汚物を見るようなその視線は、件には初めて向けられたものだった。

告解室→←微睡み



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なぎしば(プロフ) - 改革さん» ご指摘ありがとうございます。確認したところ訂正すべき箇所が分からなかったのですが、具体的にどのセリフか教えて頂けますでしょうか? (4月20日 0時) (レス) id: 520c46c8a4 (このIDを非表示/違反報告)
改革 - 三話の一方通行って話の中のセリフがおかしかったです。 (4月18日 9時) (レス) id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 作者さんの素晴らしい語彙力で、戦闘シーンの緊張感などリアリティ満載の作品が楽しめました!とっても面白いです、ありがとうございました。 (2月25日 10時) (レス) @page33 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしば(プロフ) - わたあめさん» 感想を頂けてとても嬉しいです!更新頑張りますので、これからも飽きずにお付き合い頂けたら幸いです! (5月14日 16時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 凄く面白かったです!テスト前なのに一気見しちゃいました笑更新頑張ってください!! (2023年5月11日 0時) (レス) id: ddaf0618b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なぎしば | 作成日時:2023年2月7日 17時

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