微睡み ページ38
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「__。
__ぃ」
虚脱感、というのはどうやら人間を深い眠りに誘うようで。
微睡んだ意識の中、まだ起きたくないという欲望が前へと出る。
「__おい、依り代」
ぱしゃりと顔に液体がかけられた感覚がして、それと同時に耳朶を打った声にハッと意識を取り戻した。
どくどくと耳に心臓があるのではないかと思うほど激しく脈打つ鼓動に、そういえばこんな起こされ方前もしたなと隅の方に追いやっていた記憶を思い出した。
決していいとは言えない目覚めに、ゆっくりと自分の体を起こす。
頬を伝う冷たい感触と水分を含んで重くなった髪の毛、視界を覆う白い空間に、件の生得領域内かとすぐに理解した。
そしてこの空間の主を探すべく視界をめぐらせれば、すぐに彼は見つかって。
「いくら手助けはすると言っても、己の力量を弁えないのは阿呆さな」
『…なんだかんだ言って助けてくれる癖に』
「余の体でもあるのじゃから当然じゃろう」
いつも通りの尊大な態度は変わらず、蛇の赤い目がこちらを捉える。
いつか見た歴史書では件と言えば人面牛を連想したものだが、この呪霊はどちらかと言うと蛇に近い。
…否、腕に生えた獣毛だけは一般的な件の特徴を表しているのかもしれないが。
自身の長い黒髪から滴った水滴が地面に波紋を作る。
それを見て目を細めた件は、透明な玉座から立ち上がりひょろりと異様に伸びた背を揺らしながらこちらへ歩み寄ってきた。
ジンベエさんほどでは無いがそれでも二米近くある長身に見下ろされ、私は無意識に後ずさる。
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なぎしば(プロフ) - 改革さん» ご指摘ありがとうございます。確認したところ訂正すべき箇所が分からなかったのですが、具体的にどのセリフか教えて頂けますでしょうか? (4月20日 0時) (レス) id: 520c46c8a4 (このIDを非表示/違反報告)
改革 - 三話の一方通行って話の中のセリフがおかしかったです。 (4月18日 9時) (レス) id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 作者さんの素晴らしい語彙力で、戦闘シーンの緊張感などリアリティ満載の作品が楽しめました!とっても面白いです、ありがとうございました。 (2月25日 10時) (レス) @page33 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしば(プロフ) - わたあめさん» 感想を頂けてとても嬉しいです!更新頑張りますので、これからも飽きずにお付き合い頂けたら幸いです! (5月14日 16時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 凄く面白かったです!テスト前なのに一気見しちゃいました笑更新頑張ってください!! (2023年5月11日 0時) (レス) id: ddaf0618b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぎしば | 作成日時:2023年2月7日 17時