＃ ページ35
．
「ッ、＿＿逃げろ！！」
泣き声を押し殺した誰かの声に弾かれるように顔を上げ、無意識に足を動かした。
腕の中の命を守るべく力を一層込めて、涙でぼやけた視界の中で走り出す。
なんで、なんで。
全部おまえがうばっていく。
お前は、なんなんだ。
「ティーチィッッ！」
憤りと悔しさに奥歯を噛み締め、オヤジが作り出してくれた道を失わないよう懸命に走る。
羽の如く軽い少女を最優先事項としておいて、これ以上彼女の顔が歪むことがないように。
壊れ物を扱うように丁重に慎重に＿＿そのせいで、気付けなかった。
「＿＿女の子一人捕まえらんねぇなんて言われちゃァ、海軍の面目丸つぶれじゃねェのよ」
肌を刺す冷気に鳥肌が立つ。
気だるげな声に振り返った時には、もう遅かった。
「＿＿ぐ」
肩を貫通した、鋭い氷の剣。
吹き出た血がびちゃ、と少女にかかって、それでも白い肌を持つその少女は、皮肉なほど美しかった。
心の中で謝って、前を走る仲間に彼女を投げ渡す。
凍りついていく自身の体は自由が効かなくなり、俺に興味を無くして違う仲間に目をつけた青キジを止めることさえできない。
動ける隊長たちはエースと麦わらの援護に向かってる。
だから、俺たちで守るしかないってのに。
＿＿＿その瞬間、ぞわりと肌が粟立つ感覚がした。
本能が思わず逃げろと叫ぶ、一気に指先の熱まで奪ってしまう恐怖。
それが辺りを支配して、その場にいた全員の足が止まる。
それは、青キジでさえ例外ではない。
覇王色の覇気、それとはまた違う、心臓を何者かに直に触られているような＿＿ああ、不快感。
それが一番正しい。
覇気が見せつけられた圧倒的な天賦の才に震えるものだとすれば、この悪寒はそれではない。
強さなど関係ない。ただ、恐怖。
死神が己のすぐ側に立っているのだと錯覚してしまうほどの恐怖が不快感と綯い交ぜになって、俺の膝を笑わせる。
突然目の前で動きを止めて居たはずの青キジの体がふらりと傾いた。
痛みに声を漏らしたそいつは腹の辺りを抑えていて。
＿＿＿確かに、その手には真っ赤な血がついていた。
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なぎしば(プロフ) - 改革さん» ご指摘ありがとうございます。確認したところ訂正すべき箇所が分からなかったのですが、具体的にどのセリフか教えて頂けますでしょうか？ (4月20日 0時) (
レス) id: 520c46c8a4 (このIDを非表示/違反報告)
改革 - 三話の一方通行って話の中のセリフがおかしかったです。 (4月18日 9時) (レス) id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 作者さんの素晴らしい語彙力で、戦闘シーンの緊張感などリアリティ満載の作品が楽しめました！とっても面白いです、ありがとうございました。 (2月25日 10時) (レス) @page33 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしば(プロフ) - わたあめさん» 感想を頂けてとても嬉しいです！更新頑張りますので、これからも飽きずにお付き合い頂けたら幸いです！ (5月14日 16時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 凄く面白かったです！テスト前なのに一気見しちゃいました笑更新頑張ってください！！ (2023年5月11日 0時) (レス) id: ddaf0618b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なぎしば | 作成日時：2023年2月7日 17時
