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7.ハードル。 ページ7

「ただまぁ、俺は七光りを背負う人間ってすげぇと思うけど」

拗ねたような気持ちで水しか入ってないカップを見てると、松本さんが独り言のように言った。
独り言のようだったので、何も言わずに彼をチラッと横目で見る。
そしたら彼もチラッとこっちを横目で見た。


「だってハードル、最初からめちゃめちゃ高く設定されてんじゃん」
「...ハードル...」
「俺なんて『東京から来たチャラチャラしてる小僧に商売なんて無理無理!』って目で見られてるだろーから、ハードル超低い」

小さく鼻で笑った松本さんがコーヒーを飲み干す。
その瞬間ズズズッとストローが鳴って、ちょっと眉を顰めた彼は「失礼」と小さく会釈。


「ハードル...やっぱり高いですよね、私...」
「アンタに期待してる人間からのプレッシャーは凄いだろうし、逆に妬んでる人間も中には居るだろうからそっちからのプレッシャーも凄いだろ」
「.....」
「ま、低いハードルは飛び越えるしか出来ないけど」

松本さんは椅子から立ち上がりお尻ポケットから財布を出しながら話す。


「高いハードルなら、飛び越える他にも下をくぐるって方法もあるし」
「.....」

何も言わないでいるとすぐ横まで来てカウンターに手をついた松本さんが、私の顔を覗き込んだ。

「仕事継ぐ覚悟決めたんだろ?」
「...はい、それは」
「すげぇじゃん」

彼は、フッと小さく微笑むと「氷っていくら?」とマスターに訊いた。


「480円だよ」
「やすっ」

財布から1000円札を出した松本さんが「じゃ、これで二人分」と、それをマスターに渡す。

「二人分?誰?」

私には松本さんは1人にしか見えないんだけど...。
誰か一緒にいた?生田さん?小栗さん?
キョロキョロしてると、松本さんが私に心底呆れた視線を向けていた。


「アンタ、それマジ?」
「え?」
「二人分ってどう考えても俺のコーヒーと、アンタの氷だろ」
「...えっ!?何で!?」

奢ってもらう理由が無い!
慌ててお財布を出すと、その手を彼に押さえられた。


「奢って貰える時は素直に奢って貰っとけって」
「でも!」
「若いのに遠慮すんな」
「松本さんだって若いでしょ!」
「俺、29よ?もうすぐ30」

お釣りを貰いながらそう言うと、松本さんは「オッサンから頑張る若者へのエールって事で良いだろ」と私の肩をポンと叩きドアの方へ歩いて行く。


「...あのっ!ご馳走様です!」

彼は振り返りもせず「はいはい」と、手をヒラヒラさせて店を出て行った。

8.お得情報。→←6.光。←8.25



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橘花(プロフ) - みぞれちゃんいいこ。。パラ潤もやっぱり彼らしくて、すごく素敵なお話でした!淡く苦いような甘いような、夏をすごく感じるお話で。随所で彼女のこととみぞれちゃんのことを考える潤くんが見られて切なかったですね。。10年がどんどん短くなりますように! (2018年10月2日 23時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
Minty(プロフ) - 今頃ごめんだけどやっぱり伝えたくて。私の中のパラ潤はまだまだ彼女を忘れられてなくて、だからみぞれちゃんと話した後は彼女のことを思い出してたんだろうなとか勝手に想像して切なくなってた。そういう裏側の光景まで読めるお話だった。書いてくれてありがとう! (2018年10月1日 23時) (レス) id: 38bee720d5 (このIDを非表示/違反報告)
ま( *^◇^)る(プロフ) - やっと読めた〜!遅くなっちゃった。パラ潤にまた会えて幸せだよーありがと。 (2018年9月25日 19時) (レス) id: 43b5111d45 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - お疲れ様です。っていうの遅い位かな~ 本編ですが、甘さは無いかもしれませんがキュンが、これでもかって位詰め込まれてて凄く良かったです♪みぞれちゃんも未来に期待ができそうだし…reiさんのお話読めて楽しかった♪ (2018年9月25日 19時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - reiさんのお話はみんな好きですが、このシリーズは特にお気に入りです!キャラがみんないい! まるでその世界にまぎれこんだ気持ちになります ありがとうございました! (2018年9月25日 18時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:rei | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72  
作成日時:2018年8月11日 13時

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