検索窓
今日:11 hit、昨日:24 hit、合計:667,190 hit

46.大人の男。←9.20・LAST ページ46

潤さんが大きく息を吐き出したのが、背中から伝わってくる。
もしかしたら、溜息なのかもしれない。

「みぞれ、自分が何言ってるのか分かってんの?」
「...分かってる」
「だったら、簡単にそういう事を言うな」
「......簡単に言ってると思うんですか...?」

一瞬黙った潤さんの背中をギュウっと抱き締める。
よく私、生きてられてるな...って思う位に心臓が早打ちしてる。


「...私がその人に似てるなら、代わりにしてくれても良いです」
「......」
「潤さんを助けたいって...私、言いましたよね...?」
「だから、簡単に言うなって」
「簡単になんか言ってな...!」

言い終わる前に、彼は私の腕を解いて振り返った。
呼吸に合わせてその肩が静かに動く。

「みぞれは分かってないね」
「...何を...」
「大人の男はズルイって事」


缶ビールを持ったままの潤さんの胸に、体を閉じ込められる。
私を片手で抱き締めながら、彼はビールを飲んだ。


「こんな事しても、お酒のせいにしたりする」
「......」
「明日になったら、『覚えてない』とか言うんだよ?」
「......それでも良いです」

フッて、また鼻で笑われた。
「自分を大切にしなさい」って、叱られる。


「今『寂しいな』って思ったら、近くに女の子が居た。しかも自分を使えって言ってる」
「......」
「傷付けたくは無いなー...とか思ったくせに、結局俺はこんなコトしちゃってる。酷い男だと思うよ」

空になった缶をクシャっと潰す音。直後、コンクリートの地面にそれが落ちた音。
同時に、私は潤さんの両腕に包まれていた。
さっき、こけかけたのを助けて貰った時と全然違う。
肩に、彼の顔の重み。潤さんのハットが風に飛ばされて、少し離れた所に落ちた。


「まだ、恋をする気にもなれないのに」
「......」
「寂しさだけ埋めたいなんて、勝手すぎるだろ?」

黙って首を振る。
潤さんも、首を振る。

「...もっと利用して下さい」
「ってゆーか、お前の言う『利用』って何なの?」
「え...それはもう、何でも...」

「何でも?」って潤さんが私の顔を覗き込んだ。抱き締められてるから当然めちゃくちゃ顔が近くて、無駄に瞬きが増える。

「今俺は、すげぇいやらしい事を考えたけど」
「...潤さんのお望みなら...何でも」
「バーカ」

ゴチっと頭突きされた。

「そーゆー事は、彼女としかしねぇよ」
「......じゃあ、私を彼女にして下さい...」

目の前の潤さんが、優しく笑う。

47.100年経ったら。→←45.打上花火。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (1665 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
7347人がお気に入り
設定タグ: , 松本潤 , rei
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

橘花(プロフ) - みぞれちゃんいいこ。。パラ潤もやっぱり彼らしくて、すごく素敵なお話でした!淡く苦いような甘いような、夏をすごく感じるお話で。随所で彼女のこととみぞれちゃんのことを考える潤くんが見られて切なかったですね。。10年がどんどん短くなりますように! (2018年10月2日 23時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
Minty(プロフ) - 今頃ごめんだけどやっぱり伝えたくて。私の中のパラ潤はまだまだ彼女を忘れられてなくて、だからみぞれちゃんと話した後は彼女のことを思い出してたんだろうなとか勝手に想像して切なくなってた。そういう裏側の光景まで読めるお話だった。書いてくれてありがとう! (2018年10月1日 23時) (レス) id: 38bee720d5 (このIDを非表示/違反報告)
ま( *^◇^)る(プロフ) - やっと読めた〜!遅くなっちゃった。パラ潤にまた会えて幸せだよーありがと。 (2018年9月25日 19時) (レス) id: 43b5111d45 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - お疲れ様です。っていうの遅い位かな~ 本編ですが、甘さは無いかもしれませんがキュンが、これでもかって位詰め込まれてて凄く良かったです♪みぞれちゃんも未来に期待ができそうだし…reiさんのお話読めて楽しかった♪ (2018年9月25日 19時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - reiさんのお話はみんな好きですが、このシリーズは特にお気に入りです!キャラがみんないい! まるでその世界にまぎれこんだ気持ちになります ありがとうございました! (2018年9月25日 18時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:rei | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72  
作成日時:2018年8月11日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。