シャングリラエッジ【ars J.M】

30.お誘い。 ページ30

「Aちゃんは行くの？」
「仕事の後に行けない事は無いんですけど...」

子供の頃からずーっとやってるお祭だから、最近は花火を遠くから見る程度しかしてなかった。
楽しみではあるけど、私達はきっと花火を見ながら仲間内で騒ぐ方が楽しくなってた気がする。

「もう友達と行く約束してる？あ、もしかして彼氏とか」
「かっ...れしっ！は、いません！」
「アハッ、そんな力一杯に否定しなくても」
「...彼氏は居ないし、友達とも別に約束してるって訳じゃなくて」

約束してなくても、当日の昼頃に「お祭行くー？」みたいなLINEが誰かから送られてきてなーんとなく集まってる感じ。毎年。


「じゃ、一緒に行かない？」
「...え？」
「お祭」

小窓の外、屈んで両手で頬杖をついた旬さんが片眉を上げて「どう？」と誘う。
え？誘われてる？本当に？嘘でしょ、旬さんだよ？イケ散らかしてる旬さんだよ？
私の勘違いに決まってる。

「えーっと…」
「あ、俺とじゃなくて」
「ですよね！あー、ビックリした！」

だよね、だよね！
...え？じゃあ誰と？

「俺たちと」
「俺たち...？」
「俺と、斗真と、潤」
「...えぇっ！？」

どどどどどーゆー組み合わせ！？
美女と野獣ならぬ、美男達と珍獣ですけど！


「地元のお祭りとか、旅行客の人も結構楽しめるんじゃないかなー？」

私はあわあわしてるのに、旬さんは冷静に話す。

「今年はリサーチ不足だからまだ無理だけど、来年からお客様にオススメ出来たら良いなぁと思って」
「...あ！なるほど！」
「俺らだけより、地元のAちゃんが一緒だと色々と教えて貰えるかな？と思って」
「お仕事ですね！」

そーかそーか、それなら納得。
珍獣、張り切ってアテンドします。
無駄にこの地で22年間生きてません。


「まぁ、仕事半分遊び半分だけど」

アハハーと笑った旬さんが「だから、一緒に行かない？ってゆーよりも、一緒に行ってください」と微笑む。
イケ散らかしてる。


「はい、私でお役に立てるなら」
「ありがと」

楽しみだなー！と言った旬さんが、エレベーターホールの方へ歩いて行ったと思ったら「そうだ！」と戻って来てまた窓からこちらを覗き込んだ。

「Aちゃん、浴衣持ってる？」
「はい、一応...」
「それ、着ておいで」
「浴衣をですか？」
「うん。当日のヘアメイクは俺に任せてよ」

旬さんのヘアメイク！めちゃめちゃ興味ある！

コクコク頷くと、彼は「よし！じゃ、そーゆー事で」と軽く手を振り窓から離れた。

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