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29.チラシ。 ページ29

「そうですか!?全然、元気ですよ?」

口角上げて目を細めたら笑ってるように見えるかな?と思ってやってみた。
でも斗真さんは私を指差して「空元気ー」って笑った。
とりあえあず「そんな事無いですー」って同じ調子で返す。


「...あれ?斗真さん濡れてないですね」

まだ雨は降ってる。
さっき戻って来た旬さんはシャワーでも浴びたのかって位に濡れてたのに。
斗真さんは全く濡れていない。


「俺、いつも傘持ってるもん」

ほら、と綺麗な青色の折りたたみ傘を私に見せる。

「折り畳み傘...え、何か意外」
「おいおい、どーゆー事」
「あ、ごめんなさい」
「謝るってどーゆー事」

二人でブハっと吹き出して笑い合う。

「何か斗真さんって、雨降って来たらコンビニでビニール傘買ってそうな雰囲気だから」
「行き当りばったり的な?」
「良い意味で」
「良い意味で」

斗真さんが「良い意味で」ってもう一回言ってエレベーターに乗り込んだ。
私もクスクス笑って扉が閉まるのを見送る。
手を振ってる斗真さんもクスクスしてる。
気が付くと、自然と私の口角は上がってた。


夕立は私が帰る頃には止んでいた。
ビルの外に出ると、じわっと体に纏わりつく湿度。濡れたアスファルトの匂い。

帰る前にビルを見上げるのが癖になった。
三階の灯りに「お疲れ様でした」と、心の中で呟く。
「また明日」と、小さな声で呟く。







8月も終わりが近付いて来た。
全然涼しくなる気配は無いけど、夏は終わる。

管理人室の中で私はビルに届いてた郵便物を確認していた。
その中に1枚のチラシ。
毎年、目にするチラシだ。

『夏祭り』と大きく筆文字フォントで書いてある真ん中には花火の写真。ありがちなレイアウト。
だけどそのありがちなのが、結局は一番ワクワクするのかもしれない。
私は浮かれた気持ちで、そのチラシを管理人室の横にあるビルの掲示板に貼った。


暫くすると、旬さんがお客さんと一緒に降りてきた。
「ありがとうございました、楽しんで来てくださいね!」とお客さんをお見送りした彼は管理人室を覗いて「暑いね」と私に声を掛ける。

「暑いですね」
「ねぇ、これさ」

旬さんが何かを指差してる。
多分、角度的に掲示板だ。

「夏祭りですか?」
「うん。花火もあるの?」
「はい、この辺の地域で毎年やってるお祭なんですよ」
「珍しいね、平日にやるんだ」
「昔からこの日にするって決まってるんですって」

私が言うと旬さんは「へぇ」ともう一度チラシに目をやる。

30.お誘い。→←28.チグハグ。←9.10



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橘花(プロフ) - みぞれちゃんいいこ。。パラ潤もやっぱり彼らしくて、すごく素敵なお話でした!淡く苦いような甘いような、夏をすごく感じるお話で。随所で彼女のこととみぞれちゃんのことを考える潤くんが見られて切なかったですね。。10年がどんどん短くなりますように! (2018年10月2日 23時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
Minty(プロフ) - 今頃ごめんだけどやっぱり伝えたくて。私の中のパラ潤はまだまだ彼女を忘れられてなくて、だからみぞれちゃんと話した後は彼女のことを思い出してたんだろうなとか勝手に想像して切なくなってた。そういう裏側の光景まで読めるお話だった。書いてくれてありがとう! (2018年10月1日 23時) (レス) id: 38bee720d5 (このIDを非表示/違反報告)
ま( *^◇^)る(プロフ) - やっと読めた〜!遅くなっちゃった。パラ潤にまた会えて幸せだよーありがと。 (2018年9月25日 19時) (レス) id: 43b5111d45 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - お疲れ様です。っていうの遅い位かな~ 本編ですが、甘さは無いかもしれませんがキュンが、これでもかって位詰め込まれてて凄く良かったです♪みぞれちゃんも未来に期待ができそうだし…reiさんのお話読めて楽しかった♪ (2018年9月25日 19時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - reiさんのお話はみんな好きですが、このシリーズは特にお気に入りです!キャラがみんないい! まるでその世界にまぎれこんだ気持ちになります ありがとうございました! (2018年9月25日 18時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:rei | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72  
作成日時:2018年8月11日 13時

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