シャングリラエッジ【ars J.M】

21.御職業。 ページ21

「忙しそうだね、潤」
「お陰様で。まぁ盆よりはマシだけど」

潤さん達のお仕事はお盆がかきいれ時だ。
お盆の間は3人とも慌ただしくオフィスと外を行き来していた。

「でも翔さんも盆は忙しかったでしょ？」
「毎年の事だから慣れてるよ」

櫻井さんもお盆が忙しいって事は、サービス業なのかな。
人がお休みの時に休めないお仕事。
何だろう、飲食店のホールとか似合いそう。櫻井さん目当てのお客さんとかいそう！
高級なレストランとかでソムリエさんとか...似合う！この柔らかな物腰もロイヤル感あるし。
あ、でもオーダーメイドスーツなんかの販売員さんも似合いそう。
ジュエリーショップはどう？あー、この笑顔に勧められるがままにお高い宝石を買うマダムなんかが絶対うじゃうじゃだよ！


「どした？」

櫻井さんについて色々と考えてた私に、潤さんが怪訝な顔をして言う。

「えっと...櫻井さんの御職業を推理してました」

推理ってゆーか、妄想だけど。

「あー、翔さんの仕事は絶対に当てられないと思う」
「え？...そんな怪しいお仕事を...？」

どうしよう、高級コールボーイとかだったら...！
そんなの御指名が後から後から止まらないよ！


「お前、絶対ヤバい仕事想像してんだろ」
「えっ？えっ？」
「言ってみ？何、考えてんの？」
「えっ！？言えないです、そんなの！」
「アハハッ！言えないよーな仕事って何だよ」

櫻井さんが「潤、意地悪すんなって」って笑ってる。


「僕は僧侶なんです」
「そーりょ...？」

「坊さんだよ」と、潤さんに言われて『そーりょ=僧侶』を理解した。

「えぇっ！？でも髪の毛フサフサ！」
「僕の宗派は剃髪しなくても良いんですよ」
「そうなんですか！でも確かにこのロイヤルな雰囲気はお坊さんって感じします」
「ロイヤル？」

櫻井さんがアハッと笑って「褒められたのかな？」と肩を竦めた。


「翔さん、俺ちょっとだけ仕事残ってるから事務所で待っててくれる？」
「うん、そのつもりで来てたし」
「コーヒーでも淹れるわ」
「さっき紅茶をAさんに頂いたからいーよ」

潤さんが私をチラッと見てから、エレベーターホールの方へ歩いて行く。
私の隣で櫻井さんは「よいしょ」とキャリーを持ち直した。

「色々ありがとうございました」
「いえ！」
「AさんはAさんとちょっと似てます」
「え？」
「ややこしいですね」

クスッと笑った櫻井さんも、潤さんの元へ歩いて行った。

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