19.デリカシー。 ページ19
「確かに僕も潤がここに住みたいって言って来た時は、本当にこの子は他人と暮らしたいのかな?と思ったんですけどね」
櫻井さんがマグに口を付け「美味しい」と呟く。
「でも、潤は全員分の食事を作ってくれたり同居人達とも仲良くやってましたよ」
「食事を...」
料理まで出来るの?潤さん、どこまでスーパーマンなの?
知れば知る程、自分とのレベルの違いに眩暈までして来る。
「Aちゃーん」
窓の外からお父さんの会社でずっと事務をやってくれてるおばちゃんが私を呼んだ。
「はーい、どうしたの?」
「お盆に旅行行った人達がお土産いっぱい持って来てくれたのよ!」
「へー、良いねぇ」
お盆も私はここに来ていた。
だって潤さん達はお盆も会社に来てたから、管理人としてちゃんとここに居なくちゃ。
本当はお父さんもお盆は休んで良いって言ってくれてたけど。休みたくなかった。
「だから、Aちゃんにもお裾分け」
「わー、ありがとう!」
「いっぱい食べてもうちょっと太りなさい!」
「やだよー、痩せたいのに」
「若い子は痩せたい痩せたいって、それ口癖なの?」
笑いながらビニール袋を私に押し付けるようにして、おばちゃんは去って行った。
袋を覗くとお煎餅とかお饅頭とか、THEお土産なお菓子の中に『東京』と書いてある渋いキーホルダーがあってちょっと笑った。
潤さんが帰って来たら見せてみよう。笑ってくれるかな。
「あ、すみません!うるさくしちゃって」
振り返って櫻井さんを見ると、何だかちょっと微妙な表情をしてる。
「...名前」
「はい?」
「Aさん?」
「あ...はい、朝霧Aです...けど...」
また名前...。
櫻井さんは何か知ってる?
「私の名前、何かあるんですか?」
「いや、大したことじゃないんです。同じ名前の友人がいるってだけで」
「私と同じ名前の?」
「はい」
「...あの、つかぬ事をお伺いしますが...」
私が言うと、櫻井さんは「ん?」と大きな目を少し細めた。
「その方、お元気ですか?」
「え?」
「...もしかして亡くなられ...」
喋ってる途中で、本当に亡くなってたら私ってばめちゃめちゃデリカシー無い!って気付いたんだけど時すでに遅し。もう口から出てしまった。
「アハッ!元気ですよ!」
でも私の冷や汗を引っ込めるように、櫻井さんは朗らかに笑い
「こないだも会いましたけど、ちゃんと両足ありました」
少し意地悪な顔を見せた。
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橘花(プロフ) - みぞれちゃんいいこ。。パラ潤もやっぱり彼らしくて、すごく素敵なお話でした!淡く苦いような甘いような、夏をすごく感じるお話で。随所で彼女のこととみぞれちゃんのことを考える潤くんが見られて切なかったですね。。10年がどんどん短くなりますように! (2018年10月2日 23時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
Minty(プロフ) - 今頃ごめんだけどやっぱり伝えたくて。私の中のパラ潤はまだまだ彼女を忘れられてなくて、だからみぞれちゃんと話した後は彼女のことを思い出してたんだろうなとか勝手に想像して切なくなってた。そういう裏側の光景まで読めるお話だった。書いてくれてありがとう! (2018年10月1日 23時) (レス) id: 38bee720d5 (このIDを非表示/違反報告)
ま( *^◇^)る(プロフ) - やっと読めた〜!遅くなっちゃった。パラ潤にまた会えて幸せだよーありがと。 (2018年9月25日 19時) (レス) id: 43b5111d45 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - お疲れ様です。っていうの遅い位かな~ 本編ですが、甘さは無いかもしれませんがキュンが、これでもかって位詰め込まれてて凄く良かったです♪みぞれちゃんも未来に期待ができそうだし…reiさんのお話読めて楽しかった♪ (2018年9月25日 19時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - reiさんのお話はみんな好きですが、このシリーズは特にお気に入りです!キャラがみんないい! まるでその世界にまぎれこんだ気持ちになります ありがとうございました! (2018年9月25日 18時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:rei | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時:2018年8月11日 13時