59 〜百side〜 ページ9
なら、オレもユキのためになることをするって、答えはずっと前から決まってる。
「じゃあ見学と遊びにっていう名目で行こう!でも言っとくけどユキ、こっちからの手出しはNGだかんね?」
今度は心からの笑顔で言うと、ユキは前を向いたまま、そうねと言って微笑んだ。
・
という事で今に至る。
マツリちゃんが主犯格側じゃないって知ったのはさっきだった。
「素晴らしかったですよ。百さんと千さんがいなくなってからのAさんの対応」
食後の緑茶を飲んだ巳波が微笑んだ。
「オレもチラッと見てた!何言ってんのかまでは聞こえなかったけど、すぐ撮影始まってたしさすがA!って思ってた!」
笑顔で返す。
あの状況でAに任せたのは、主犯格とAを大勢の人がいる場で、こういう問題があるんだという事を知ってもらうためと、お互いを一度ぶつからせるため。
つってもAの方が、強そうに見せんのも情を見せんのも上手いだろうから、喧嘩にすらなんないだろうとは踏んでたけど。
「好きな相手にあそこまで言われると傷つくと同情されてまして。ですが仕事は仕事。先ほど千さんにお怒りになっていたように、私情を絡ませて現場の士気を下げるのはやめてくれない?と、おっしゃっていました』
「あ、僕だけに言ったわけじゃないんだ・・・」
ユキが少しホッとしたように息をもらす。
あんなに自分は悪くないっつってたのに。
内心Aに嫌われないかヒヤヒヤしてたのかな。その気持ち、めっちゃわかる。
「あと、彼女の役をはずそうとした監督に、嫉妬から来るものだとわかってますし、失敗や間違いは誰にでもありますから、次はないですよとそれはいい笑顔でおっしゃって。ふふ、そういう方、好きですよ私」
「「「えっ?」」」
ユキとマツリちゃんと3人揃って驚く。
巳波を見た後すぐにAに視線を向ける。
Aはキョトンとしてから苦笑いした。
『誉められてる気がしないんだけど』
「好意を持ってるのは本心ですよ」
『ほら誉めてない』
「あらあら」
「ちょっと!?駄目だよ!?Aはオレたちのだかんね!?手出し厳禁!後輩相手でも先輩相手でも、黙っちゃいないよ!?」
「あら、それは怖いですね」
微笑んで言う巳波からは、怖いなんて感情は一切なさそうだ。
うぬぬ・・・
今までのAを好きになった子たちは、Aがオレと付き合ってる事を応援してくれたのに。
『・・・何の戦いよ・・・』
Aが呆れたような声を出した。
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作者名:miz | 作成日時:2021年7月3日 9時