56 〜百side〜 ページ6
マツリちゃんという子がいる事務所の知り合いに、最近巳波が行ったか聞くと、来てないって返事を貰う。
多分、巳波が言ってた“期待してる以上に見合うとは思う”って言うのは、昔のオレみたいに、誰かにお願いしに行ったんだと思ってたんだけど・・・
「百くん、この方はドラマに時々出てますよ。名前のある役はないですけど。あとこの方はモデルでーー」
おかりんの言葉に頷きながら、対象の事務所の知り合いに、最近巳波がそっちの事務所に行ったかラビチャで聞く。
返事はNo。
うーん?
首を傾げた時、おかりんにお客さんだと言って事務員さんが来る。
おかりんに手を振ると、ユキがパソコン画面を見て指差した。
「・・・ねぇ」
「うん?何?ユキ」
「星影とツクモは?僕らが動いてるとはいえ、事務所の名前だけで力あるけど」
一瞬キョトンとして、すぐ笑顔になった。
「そうじゃん!巳波の出入りが自由すぎる2カ所だから、当たり前すぎて聞くリストに入れてなかった!さっすがユキ!」
そういや星影の養成担当のサポートディレクター、確かあのバター専門店のクロワッサン好きだったよね!?
今撮影してるAのドラマについて話をしたいんだけど、と流れるようにラビチャを打ってる途中で、おかりんへの来客の人が応接室に通されるのを見た。
「あ!」
「え?」
思わず指さしてしまった先。
ユキも顔をそっちに向ける。
ラビチャ相手のサポートディレクターが、おかりんと一緒に応接室に入っていった。
ササッとオレだけ移動して、応接室のドアに耳をつけたり窓から中をのぞき込んだりする。
事務員さんが、また何かやってると仕方なさそうに笑いながらオレを見ては通り過ぎていく。
気にせずにちょっと真面目な顔でユキに近寄って敬礼した。
「ユキ隊長、対象がおかりんに何か渡しているのが見えました!」
「賄賂か!モモ隊員、引き続き報告を・・・」
「申し訳ありません!」
ユキが言い終わるより早く、応接室から大きな声が聞こえる。
ユキと見合ってから一緒に中をのぞき込んだ。
サポートディレクターがおかりんに頭を下げている。
会話はもう聞こえない。
ただ、おかりんがディレクターをなだめるように、肩に手を置いて何か言っているのは分かった。
応接室から2人が出てきそうな気配がすると、ユキと一緒にササッと元の位置に戻る。
サポートディレクターは、丁寧にお辞儀をしてから帰って行った。
おかりんが有名菓子店の紙袋を机に置いて、こっちを向いた。
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作者名:miz | 作成日時:2021年7月3日 9時