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「大丈夫。ユキだけで作ったって、Aも一緒に作ったって、良いもん出来るってオレが保証する!」
『百・・・』

ニカッと八重歯を見せて笑う百に感動して、手伝うよと千に言おうとソファを向く。
当然のように寝息をたててる千に、後で言えばいいかと思ってると、百がファイルから楽譜を出した。

「付箋貼んない?」
『あ、貼る。・・・あ、でも今持ってない』

しばらくやらないと思ってたから、家にしまってた。

「大丈夫!えーっとねー、確か〜」

百がゴソゴソ千の鞄を漁る。
いいのかなと少しハラハラしてると、百がすぐにペンケースを出してきた。

「じゃーん!」

笑顔のまま、ペコちゃんのように舌を出してる。
ワクワクしてるのが表情でわかる。

子供みたい。
かわいい。

自然に、ふっと笑ってしまっていると、百が握った手を差し出してきた。
パッと手を広げると、そこにはいつも私が使っているのに似た付箋。

「ユキ、ずっと持ってたんだ。いつでもAが出来るように」

驚いて百を見上げる。
目が合った百は、優しく微笑んでくれた。

胸の奥が暖かくなる。
そっと付箋を手に取った。

『・・・起きたら、お礼とーー』
「うん」

『ーー直し要求しないとね』

「・・・え!?」

目を丸くした百に、ニコッと笑顔を向ける。
楽譜を手に取って、さっき気になった所や、千が納得いってなさそうな所に付箋を貼っていく。

パーテーションの向こうから、おかりんが顔を出したけど、私は気づかなかった。

「・・・さっき感動の場面っぽかったですよね」
「おかりん。いつからいたの」
「百くんが付箋をAさんに見せた辺りでしょうか。・・・すごい量の付箋貼ってませんか?」
「・・・貼ってんね・・・」

百が冷や汗をかきながら、若干ジト目でAを見る。
すぐにその表情は笑顔になっていった。

「・・・でも、これがAらしい。容赦ないとこも、音楽好きなとこも。・・・めっちゃ生き生きしてる」
「・・・そうですね」

数分後、おかりんに起こされた千は、楽譜にペタペタ貼られた付箋の数に、嬉しそうに笑っていた。


『・・・多い付箋に嬉しそうだなんてMじゃないの?』
「僕はSだよ」
『思い込みって怖いね・・・』
「Aって話聞かないよね」
『千に言われたくない』

「ユキもAも、興味あることしか聞かないじゃんか」
「『・・・ごめんなさい・・・』」

ぷくーっと頬を膨らませた百に、千と仲良く謝った。

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作者名:miz | 作成日時:2021年7月3日 9時

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