91 (FriendsDayの後) ページ41
タクシーに乗って私のマンションの住所を運転手さんに告げてから、ポスンと座席に背中を預ける。
百はさっきのジト目を全く感じさせない様子で、世間話をするように軽く話し始めた。
「2週間も全く顔合わせないのって初めてじゃない?2週間Aの休みがないのはゴロゴロあったけどさ」
『うん。4日会わないとか、忙しくても仕事だけでも顔合わせるとかはあったけど、さすがに2週間はないよね』
「みんな一緒なの?」
『そうだね。どの位大きいコテージなのか知らないけど、よくあるじゃん。閉じ込められる系。それやるんだって』
予告編でそこまでは明かされて、事務所にも説明されるのに入ってる部分だけ話す。
実はそうちゃんはミスリード役だとかは内緒だ。
犯人は新人助手っぽいですが犯人は別にいます、って脚本家さんが言ってただけだけど。
あと、犯人役にしか“あなたが犯人だ”と伝えないらしい。
リアルな感情を引き出すためにという、監督の意向だ。
それを思い出していると、コソッと申し訳なさげに百の指が私の指に絡む感覚がした。
タクシーの運転手さんがいるからという理由もありそうだけど、やっぱり寂しいと思ってくれてそうだと思って、頬を緩ませながら百の手に応える。
チラッと百の表情を窺うと、少しだけホッとしたように微笑む百に、ますます私の頬は緩む。
「楽しんで撮影してきて!」
百らしい笑顔の言葉に、笑顔で頷いた。
いつも夜一緒に過ごすと、大体百はうちに泊まる。
今日もそうだと思っていた。
「じゃあね〜」
マンションの前でタクシーが停まってドアが開くと、百が笑顔で私に手を振った。
『え?・・・うん』
不思議に思いつつ、泊まらないの?という言葉を、タクシーの運転手さんも聞こえる位置にいるのに言えるわけもなく、手を振ることしかできない。
ちょっとしてから戻って来るとか?
それとも2週間会えないから慣れる練習?ありえる。思い込んだら急に距離おかれたこともあるし。
去っていくタクシーが見えなくなる前に、百に心配かけまいとマンションに入った。
手洗いうがいをしてる間にラビチャの着信音がする。
百記者いたし、ちょっとしてから行く!安心して(*´ω`*
Aわかった!
ホッと胸をなでおろして、初めて不安になってた自分に気づく。
2週間会えないことではなく、2週間会えないことを知った百がどう思うかどうかが不安って事。
ジト目ではあったけど。
我慢を隠すのもうまいから、百。
81人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:miz | 作成日時:2021年7月3日 9時