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「だってこれ・・・!!」

瑠璃さんが両手で掴んだ分厚い雑誌を目の前に掲げる。

ブライダル雑誌、4月号。

『これは、あの・・・』

6月の表紙を飾るし、皆の仕事関係もあっていただいた物だ。
けどもプロポーズはされているのであって。
でも、結婚はまだと言われてるのであって。

△になら聞かれればきっと簡単に事情言えるのに、百のお姉さんとなると途端に言いにくくなるのは、それによって百の立場が微妙になりそうだからか。
百には百の考えがあるし、私も分からないわけでもないし。

キラキラした目の瑠璃さんに、心の中で謝りながら苦笑した。

『仕事で貰ったんです。今度表紙を飾るので』
「ああー・・・あー、そっかぁ・・・」

明らかにショボンとした瑠璃さん。
ごめんなさい・・・

瑠璃さんが雑誌を元の位置に戻してくれてから、さっきとは一変して元気に笑顔を見せてくれる。

「今忙しそうだもんね!テレビで観ない日ないし!百もAさんも結婚は考えてるって前言ってたし・・・でもきっともうすぐ早く式挙げたいって気分になっちゃうよ!」

すごい自信。

『どうしてですか?』
「私が式挙げるのを見たらってのもあるけど・・・へへ、後で言います!」

瑠璃さんがかわいくウインクした。

変装してマンションを出て駅の方に向かう。

『うわー、電車なんて何年ぶり・・・』
「や、やっぱバレちゃう!?タクシーにしましょうか!」
『変装してるし電車の中では極力喋らなければ大丈夫ですよ。百とか千みたいに特殊な髪色してませんし』

というか朝食べてないんだよね。
ブランチでもいいけど、瑠璃さんお腹空いてるかな?
つか食べる時間あるかな?

『瑠璃さん、11時で間に合うって言ってましたけど、どこに行くんですか?』
「えーと・・・結婚式場まだ決まってないんですけど、気になってる所はあって・・・そこと提携してるドレスのレンタルショップです!」

ん?
気になってるとこって結婚式挙げるとこだよね?
ドレス?

『試着!?』

思わず大きい声が出て慌てて手で口を覆う。
駅に近かったから2人でダッシュで構内に入る。
良かった、お金入ってた。

「あー、焦ったぁ・・・」
『すみません・・・』

息を切らしている瑠璃さんの横で、少しも息が乱れない私が両手を合わせた。

『え?試着に私がついて行って良いんですか?旦那さんと行けば・・・』
「何でも褒めるから役に立たない」
『良し悪しですね、わかります』

百も何でも褒めそうだと思った。

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作者名:miz | 作成日時:2021年7月3日 9時

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