心の成長と特別な事 ページ14
万が夕飯をとるための休憩に行くと言ってくれて、事務所の外へ向かう。
「今日忙しかっただろ。･･････急ぎの話？」
『急ぎ･･････かな。微妙。』
「急ぎじゃないの？･･･ああ、でもしばらく俺も忙しいし、話せるときに話そう。」
『ありがとう。例の記憶の話なんだよね･･･』
呟くと、万がピタッと止まった。
『ん？』
「A、俺の家に行こうか。車にしよう。」
駐車場へ向かうことになった。
後部座席に座る。
『おお！王様プリンのぬいぐるみ･･･！･･･って社用車でしょ！いいの？』
「ごめん、間違えた。」
珍しいなと思いながら、今度はちゃんと万の車の後部座席に乗った。
「何かあったの？」
運転しながら聞いてくる万。
ミラー越しに視線がフッと合う。
2年半位前から、前世の記憶がアイドリッシュセブンの本編とTwelve Fantasia Tourの主要部分を除いて薄れてきてる事、前世の“私”の生活の記憶がもう映像として頭に流れない事を話すると、万の家に着いた。
「簡単なのでいいか？」
言いながら残り物の煮物とか漬け物とか色々出してくれて、味噌汁と焼き魚を作ってくれる。
私や千に意地悪い事を除けば、いい旦那さんになりそう。
食べる前に万が、食べながらで悪いけどと言ってB５サイズのファイルを持ってきた。
「これさ、3年半位で俺なりに色々調べたことなんだ。前世の記憶を持って生まれる人って、全日本人の20%いるらしいよ。」
万が食べながらファイルを開いてルーズリーフの上にトントンと指をやった。
「大体が8歳位から記憶が消えていく。個人差はあるけど、きっかけもある。本人の心の成長が原因。
Aが、前世の旦那さんとの事が気持ち悪いって言ってるの聞いてから調べたし、途中から記憶が蘇った例は見つからなかったけど、有り得るみたいだし。」
『8年って意味で捉えるなら同じって事？』
「そう。でも、記憶が薄れていくとかなくなってるとか、初めて聞いたし。それまでは当てはまらないかなと思ってた。言えよ、もう。」
万が私を睨む。
『だって、消えてきてても頭の中に映像としては、あったんだもん。まさかなくなってると思わなくて･･･。』
「Aはさ、映像？がなくなったって気づいたのいつ？」
『この前だよ。ツアー最終日の少し前。でもなくなったのはもっと前だと思う。常に意識してた訳じゃないから分からないけど。でも、ツアーの主要部分以外がなくなった時はハッキリ分かる。日記帳があるから。』
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作者名：miz | 作成日時：2019年5月16日 5時
