私が譲れない事 ページ37
「い・・・いつから?」
百は若干、頬を引きつらせながら聞いてきた。
そこまで驚く事だった?
・・・ああ、でも百には言えなかったから、他に知ってる人がいるのは確かに驚くかも。
『えと、失踪する前。最後に会った時。』
「そ、そう・・・・・・。」
あれ?
驚くというより、落ち込んでる?
「他に・・・知ってる人って、まさかいたりとか・・・」
少し遠慮がちな視線で百が聞いてきた。
『いないよ。わざわざ言っても頭おかしい扱いでしょ?聞かれるような人もいない。万と千には、いつか話すって言ったけど、千は別に知らなくてもいいって思ってるみたいで、そのままでいいって言って受け入れてくれた。万は、私が話すのを待ってくれた。・・・・・・2人には凄く救われた。』
微笑んで言ったのに、百は私に背中を向けてブツブツ言ってる。
「どうせ待てなかったもん。知りたいって怒ったもん。話してくれるって言うまで動かなかったもん。オレは救いようがないよ。」
【もん・・・って・・・・・・。】
『百は百でしょ?そりゃ話したくなかったよ。百はすぐに自分を犠牲にしてまで私や千を守ろうとするから怖いんだよ。』
そう言うと、百がグルンとこっちへ向いて私の服の袖をめくった。
「どの口が言ってんの!?この傷痕は、Aがバンさんを庇おうとしてできた物でしょ!しかも咄嗟だと思ってたら、記憶があるって!それって、大怪我するの分かってて庇ったんじゃんか!それこそ酔狂でしょ!!」
『・・・っ、命までは投げないよ。それに咄嗟だった。未完成な僕らの、どの時に照明が落ちてくるかなんて分からなかった。私の記憶は、細かい所が分からないの。』
百に話す。
月日や場所が、分からない事。
時系列で大体の順番は分かっても、知らないことが意外とあること。
そして・・・
『10年以上、記憶と同居してるけど、最初に頭に記憶が流れた時から、ちょこちょこ書き足してた。2年半前位からそれ以上は思い出さなくなった。多分書いた事が全てだと思う。
・・・・・・それに、理由は分からないけど、Twelve Fantasia Tourの事は主要部分以外思い出さなくなった。』
「ん?日記帳には書いてるんでしょ?」
『うん。日記帳には書いてある。読み直したら思い出せるけどね。』
記憶が消えてきたのは、いつからか分からない。
でもTwelve Fantasia Tourの事だけだ。
だからそんなに重要視していない。
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作者名:miz | 作成日時:2019年4月19日 5時