そのうち・・・ 3 ページ21
5年位前と変わらない家具の配置。
懐かしさと共に、今までの色々な事を思い出す。
リビングに通されると、百の家族が揃っていた。
電話機の隣に見覚えのある缶が置いてあった。
以前に挨拶に来た時に手土産に渡したfonte chocolatの焼き菓子詰め合わせの缶だ。
懐かしく思っていると、千が立ったまま口を開いた。
「初めまして。百瀬くんとRe:valeとして活動しています。折笠千斗と申します。隣はヤスです。」
「そっちは本名名乗らないの?」
瑠璃さんに睨まれた。
美人に睨まれるのって千で慣れたと思ってたけど、瑠璃さんだとだいぶショック!
「彼女は事情があってまだ名乗れません。・・・それで、今日はお姉さんに百瀬くんを許して欲しくて伺いました。」
千が瑠璃さんを見て言った。
千の手が震えている。
でも目は真っ直ぐ、瑠璃さんたちを捉えていた。
「お願いします。仲直りして下さい。僕が歌を続ける為にしてくれたんです。」
千が頭を下げる。
私も慌てて頭を下げた。
何も答えない瑠璃さんを前に、千は床に座って土下座した。
「百瀬くんは家族を大事に想っています。このままじゃ彼に心からの笑顔は戻りません。お願いします!」
分かっていても驚いた。
「土下座なんて止めて。」
千が起き上がると、瑠璃さんの顔が赤くなった。
【瑠璃さんって、やっぱり百のお姉さんだよね。こういう所。】
「・・・っ許してあげてもいいけどヤスさんは関係ないでしょ。事務所でメンバー入りしたって5周年特集で見たわよ。」
「観てくれたんですか。」
「観たわよ。・・・これでもRe:valeのファンなんだから。」
『ありがとうございます。』
嬉しくて微笑んで言うと、瑠璃さんは赤い顔をもっと赤くした。
百のお母さんが椅子を勧めてくれて座る。
「Aさんとバンさんは、どうしてるか知ってるの?」
瑠璃さんが聞いてきた。
「万はIDOLiSH7の事務所で働いています。Aは・・・。」
千が私をチラッと見て微笑む。
私は頷いて前を向いた。
『私です。億安Aです。』
瑠璃「え?」
『お久しぶりです、瑠璃さん。そして・・・百瀬くんのお母さん。』
瑠璃「え?」
余りにも放心しているので、鞄からメイク落としを出して落とす。
落とし終わると、ハッとした百のお母さんがゴミ箱を渡してくれた。
瑠璃「Aさん・・・」
千がヤスになった経緯を話してくれた。
話し終える時には全員を取り巻く空気は柔らかかった。
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作者名:miz | 作成日時:2019年4月19日 5時