笑顔のキミが好き 【千】 2

つらくて、つらくて、楽しい　2　〜千side〜 ページ50

苦しんで生んだものさえ、愛されなかったり憎まれたり、笑われたりする。
それでもそうして生きていく。
ここにある何かを、表現し続けていたいから。

【自分の手を離れても、それによって生まれる、それぞれの感情までは責任は持てないけど。愛されても、憎まれても、笑われても、興味を持たれなくても、それでも生み出したい、表現したいものはあるから。】

「君も同じだろう？つらくて、つらくて、楽しいだろう？これだけでもキャパオーバーになるのに、他のものを持ち込んだらだめだよ。」

手柄、成功、立場、そんなものを考えているように見える。

「作品や技術じゃなくて、必死に自分自身を評価されたがってる。･･････どうしちゃったの？」

大和くんは答えなかった。
でも、言いたいことは言えたと思う。

これで変われるかどうかは分からないけど。

帰ってベースだけある程度完成間近の楽譜を見る。

【つらくて、つらくて、楽しい。】

絞り出すように僕から生まれて、そしてAやモモの手が加わって、より良い物が生まれる。

一緒にやる人がいるのは楽しい。
孤独の世界から一歩踏み出すと視界が明るくなる気がする。
曲が生まれる瞬間も視界が明るくなる。

でも今日は寝よう。
布団の中に入って、うつらうつらしてると、Aから電話がかかってきた。

【珍しいな。夜中に。】

あくびをしながらスマホに手を伸ばす。

･･･『ごめんね。夜中に。寝てた？』

「本当だよ。何時だと思ってるの。･･･何かあった？」

･･･『そうちゃんから電話があって、みっちゃんとヤマさんが喧嘩して家出したの。いおりんがみっちゃんに付いてった。だからね、見張ってた百が、みっちゃんといおりんを泊まらせる事になったから、ヤマさんお願いしていい？』

【喧嘩？家出！？･･･また面倒な事を･･･】

「大和くん、一晩位なら大丈夫でしょ。明日の朝、声かけるのでいい？」

･･･『いいよ。』

「Aのお願いなら特別。貸しね。」

･･･『･･････分かった。』

何でそんな事になったのか聞くと、大和くんが今まで黙ってた志津雄さん関連らしい。

ただでさえ大変なのに、もっと自分の首をしめてどうするんだ。

【手のかかる後輩だな･･････】

電話を切って、ふっと笑う。
サイドボードに置いて、布団を被って寝た。

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