休日出勤 ページ10
某日、土曜日。時刻は21時を回っており、港の風が夜を含んでビルの合間を縫うように通り抜けてゆく。そしてAも潮風と同じくして、ビルの合間でバイクを颯爽と走らせていた。目的地は客との合流場所でもヤのつく職業の事務所でもなく自宅である。本来であれば裏社会で活動する情報屋は夜が営業時間な訳だが、とある内閣総理大臣補佐官様の呼び出しで昼間から中央区に赴いていた。
「あの下郎どもと関わるのは構わないが、あまり肩入れするなよ。」
信号でブレーキをかけた時。ふと、昼間に言われた言葉が脳裏で蘇る。その言葉の主は根は悪い人ではないことは分かっているのだが、Aはこの女尊男卑と成り果てた現代をあまり良く思ってはいなかった。確かに以前までの女性の立場は低かった。理不尽なこともあった中で、中央区にいた男性達はふんぞり返ってなんの対策も立てようとしなかった。そんな中で世の中を変えようと立ち上がった彼女を立派だと思うと同時に、計り知れない努力がそこにあったのだろうと察する。だからこそ嫌うことが出来ずに今日もこうやって休日出勤していたという事だ。
信号が黄色に差し掛かった時、耳に装置していたハンズフリーのBluetoothイヤホンが通知を受信し、電話が繋がる。
「もしもし、シノです。」
「今どこだ、って運転中か。なら丁度いい今から俺の事務所にこれるか?」
「えぇ、大丈夫です。15分後にそちらに向かいます。それでは」
電話を切ったAは目的地変更のため急遽Aはウィンカーを左にきる。そして信号が青くなると同時にガタリとギアを変えてこの街の王様の元へ向かうべく、速度を増して行った。
********
「あ、シノさんお久しぶりです。兄貴なら部屋に。お連れしましょうか?」
半袖の白シャツと派手なアロハシャツ。チンピラを絵に書いたような彼はここで取引をすることが多いのもあって、今では顔馴染みとなっていた。"兄貴"に振り回される彼の様子はときに同情を抱く程で、それでもなおその"兄貴"に着いているのだから大した根性だ。
「いえ、また貴方までも巻き込んだら大変ですので大丈夫です。ご親切にどうも。それと、もうそろそろ衣替えしないと風邪ひかれますよ」
「こちらこそ、ご親切にどうも」
別れを告げたあとに、馴染みのドアを開けると白と赤が目に入る。
「お久しぶりです。左馬刻さん。貴方が暴れてないなんて明日は台風ですか」
「んだと、相変わらず減らねぇ口だな」
「それはどうも」
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雪@そらなー - 鵠さん» 作ったよ〜!裏切り+愛=呪いで検索かけたら出ると思う! (2018年12月12日 20時) (レス) id: a70a7db5f1 (このIDを非表示/違反報告)
鵠(プロフ) - 相澤雪さん» ありがとう!もし作ったら教えてね (2018年12月7日 22時) (レス) id: c75e48906d (このIDを非表示/違反報告)
相澤雪 - めちゃめちゃ参考になった!更新頑張って!! (2018年12月7日 15時) (レス) id: a70a7db5f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鵠 | 作成日時:2018年12月3日 22時